近年、グローバルのIT市場では、中国企業の台頭が著しく目立つようになってきた。急成長を遂げ、昨年度には年商4兆円超えを果たした中国ICTメーカーの華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ、以下、ファーウェイ)は、通信事業者向けのネットワーク事業や、コンシューマ向けの端末事業に加えて、グローバルで法人向けビジネスを強化し始めた。2013年第4四半期には、前年同期比188%増のx86サーバー出荷台数を記録し、通年のグローバルのサーバーシェアは2.8%で4位を獲得(米ガートナー調べ)。日本でも間接販売網を本格的に整備し、すでに複数の大手商社と手を組み始めている。売上規模では富士通に匹敵する中国ICTメーカー、ファーウェイの価値を探った。(取材・文/上海支局 真鍋武)
ファーウェイとは何者か 通信機器・端末の世界大手が法人市場に進撃
中国IT企業の台頭が著しい。EコマースやSNSを手がける阿里巴巴集団(アリババ)や騰訊控股(テンセント)、新興スマートフォンメーカーの小米科技(シャオミ)など、グローバルにその名を轟かせる企業が急増している。法人向けビジネスでは、PCメーカーの聯想集団(レノボ)が、IBMのx86サーバー事業を買収し、市場を賑わせたことは記憶に新しい。
そんな中国のIT企業のなかで、ひときわ大きな存在感を放っているのが、ファーウェイ(任正非CEO)だ。2013年度(13年12月期)の売上高は、前年度比8.5%増の2390億元(4兆1371億円)と、中国IT企業で最大規模を誇る。
ファーウェイの設立は87年。スイッチやルータなど、通信事業者向けのネットワークインフラ構築ビジネスに端を発している。これまでにグローバルの主要通信事業者50社のうち45社がファーウェイのネットワークインフラを活用していて、近年急速に普及している商用LTEネットワークでは、すでにグローバルで約300件の受注実績を積み上げた。通信事業者向け事業は、ファーウェイの根幹ビジネスとして大きく成長し、13年度には売上高の約70%を占める1665億元(2兆8821億円)までに拡大している。
ファーウェイの存在が、広く一般に浸透し始めたのは、コンシューマ向けの端末事業を開始した03年以降。モバイルWi・Fiルータやスマートフォン、タブレット端末などを提供している。調査会社の米IDCによると、14年1~6月のスマートフォン出荷台数で、ファーウェイは世界シェア3位を獲得。コンシューマ向け端末事業の13年度の売上高は、全体の24%を占める570億元(9867億円)となっている。
一方、サーバーやストレージなどの法人向けICTソリューション事業は、ファーウェイの第3の成長機軸として、11年に本格的に始動した。歴史が浅いだけに、13年の売上高に占める割合は6%の152億元(2631億円)にとどまるが、17年度には1兆円規模までに急拡大する構想を打ち立てている。実際、13年度売上高の前年度比成長率を事業別にみると、通信事業者向け事業の4%増、コンシューマ向け事業の17.8%増に対して、法人向け事業は32.4%増と最も伸びている。現在は、成長に向けた製品開発やチャネル体制を強化しているところだ。
知ってる?ファーウェイの三つの特徴
1.グローバル化 海外売上比率は65%
ファーウェイはグローバル企業だ。現在、約170か国に事業を展開していて、13年度の海外売上比率は65%に達している。富士通の35%、NECの18.7%と比較しても、ファーウェイのグローバル化は突出している。
このため、グローバルの各拠点での公用語は英語で統一。本企画の取材にあたって、中国・深・にあるファーウェイ本社を視察したが、従業員は中国人だけでなく、欧米人やアラブ人の姿も数多くみられ、周辺の中国人一辺倒とは異質なグローバル化した空間が広がっていた。日系大手IT企業の本社と比較しても、明らかに外国人の数が多い。
2.資本 純粋な民間企業
ファーウェイは純粋な民間企業だ。従業員持株制を採っていて、政府機関や企業などの第三者は、一切、ファーウェイの株式を保有していない。利益の大半は、株式を保有する従業員に配当金として支払われ、これが従業員のモチベーションを上げる要因になっている。
民間企業であるものの、任正非CEOが中国人民解放軍の出身であることや、急速に事業規模を拡大したことから、諸外国からは、中国共産党との政治的な関係が疑われている。しかし、中国政府の政治的関与の証拠が明示されたことはなく、ファーウェイも一貫して事実無根を主張している。
3.独特の経営体制 半年でCEOが変わる
ファーウェイは、11年から3人の取締役副会長が半年ごとにCEOを交代する「CEO輪番制度」を実施している。狙いは、一人の経営者への権力集中や、意思決定の硬直化を防ぐことにある。
現在の輪番CEOは、取締役副会長や人事委員会の最高責任者などを務めている胡厚崑氏で、任期は14年10月1日から15年3月末まで。このほか、戦略・マーケティングを得意分野とする徐直軍氏と、財務を専門領域とする郭平氏が輪番CEOを務めている。
なお、創業者の任正非氏はCEOの肩書をもつが、実際には会長色が強く、実務の執行最高責任者は輪番CEOが務めている。
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