Special Feature
【紙面で振り返る2022年】変化に挑み続けた1年、ベンダー・ユーザーともにさらなる飛躍へ
2022/12/19 09:00
週刊BCN 2022年12月19日vol.1950掲載
新型コロナ禍はデジタルによる社会変容を加速させた。2022年のIT業界は、その変革のニーズに対応するため、ベンダー自身もまた変化に挑み続けた1年だったと言えるだろう。ビジネス面ではソリューションをより広く届けるためのパートナーエコシステムを見直し、社内マネジメントにおいては、ベンダーが率先して新たなモデルを打ち立てる姿が見られた。他方、ユーザー企業のIT成熟度も深まり、モデルとなりうるケースが増えている。22年の本紙特集を振り返り、来年のさらなる飛躍に向けたヒントを探る。
(構成/藤岡 堯、大畑直悠、大向琴音、日高 彰、大蔵大輔)
Review 1
22年は大手ベンダーでパートナーエコシステムを見直す動きが広がった。クラウドへの対応やデジタルトランスフォーメーション(DX)需要の高まりなどによる、新たなビジネスモデルに対応するため、より多様な形へと生まれ変わっている。
4月18日・1919号の「ビジネスモデルの多様化に対応する ITインフラ各社のパートナー戦略」では、米Microsoft(マイクロソフト)、米Nutanix(ニュータニックス)、米Dell Technoligies(デル)のインフラ3社を中心に取り組みを伝えた。各社とも製品販売からサービス提供型へと収益モデルを移行させる中で、パートナーのビジネス変革を促すためのプログラムを打ち立てた。
4月18日・1919号掲載
自社の成長のために、パートナーエコシステムを重要視するのはセールスフォース・ジャパンだ。6月13日・1926号「拡大続くセールスフォースのエコシステム もたらす価値は多岐に」は、拡大を続ける同社のエコシステムの現状に迫った。DX需要の増加などに伴い、同社のパートナー数は急増。もたらす価値は多岐にわたっており、エンドユーザーによる外販やパートナー同士の連携、事業変革にもつながっている様子をレポートした。
12月5日・1948号「米Kyndrylのパートナー戦略、急速に進むアライアンス展開は何を目指すか」は、Kyndryl(キンドリル)のパートナー戦略が進む道を解説。連携によって、キンドリルにもパートナーにも価値が生まれるだけでなく、その組み合わせによって顧客にも価値を届け、3者が「Win-Win-Win」の関係になるアライアンスこそが求められていることを報じた。
国内において拡大を図るために、パートナーエコシステムの活用が最重要課題となるベンダーは多く、来年も新たな戦略が増えそうだ。一方でパートナー企業もまた、新時代のビジネスモデルに対応するため、あり方を模索する必要があると言える。あくまで両輪として、社会課題の解決に臨む姿勢が求められるだろう。
Review 2
人事制度をはじめとするマネジメント改革は今もなお、多くの企業にとって重要な経営課題となっている。そのためのソリューションを提供する立場であるITベンダーもまた、最新の技術、考え方を活用し、自社を変革させている。いわば、ユーザー企業に対する「ショーケース」としての役割を果たしているのである。
デジタル化の進展や国内労働人口の減少などにより、大手企業が続々と「ジョブ型雇用・人事制度」の導入を発表している。とりわけ、ジョブ型に親和性の高い業界であるITベンダーが先進的な動きを見せている。7月4日・1929号「機運高まる『ジョブ型』の現在地 大手ITベンダーが進める人材マネジメントの要諦」は、日立製作所と富士通の取り組みを通じて、ジョブ型制度の実情や意義を探った。
グローバルで競争力を高めるために、優秀な人材の獲得・育成につながるジョブ型制度は不可欠となるが、その本質はいまだ理解されていない面もある。ベンダーが先駆的にモデルを示し、国内企業が人材開発に積極的にコミットメントする流れが生まれることが望まれる。
働き方改革に関しては、オフィスのあり方も検討点となっている。オフィス回帰へと進む前に、「オフィスは何のために存在するのか」という問いを再考すべきである。12月12日・1949号「外資ベンダーの事例で探る コロナ後におけるオフィスのあり方」では、米Workday(ワークデイ)日本法人、SAPジャパン、Okta Japanの3社の新拠点から、コロナ後にふさわしいオフィスの姿を考えた。
12月12日・1949号掲載
3社ともに共通するのは「コミュニケーションやコラボレーションのための空間」としてオフィスをとらえている点であり、そのために各社は各様の工夫をこらしている。ただし、それは設備を整えるだけで、実現されるものではない。社員一人一人への意識づけ、自由に働けるための人事・評価制度の確立など、ソフト面での課題も少なくない。オフィスをどう定義づけ、社員の生産性向上につなげていくかを、経営層は真剣に考えなくてはならないだろう。Review 3
ユーザー企業では、デジタル技術の活用に対する成熟度がさらに深まった1年だった。特集でもITを積極的に取り入れ、ビジネス成長につなげる企業がいくつも登場した。
6月20日・1927号「航空需要V字回復の波をつかめ! 羽田空港の利用体験向上で収益最大化 日本空港ビルデングが挑むワン・トゥ・ワン・マーケティング」は、データを活用した顧客体験の向上施策を加速させた日本空港ビルデングの事例を解説。同社はデジタルマーケティングを推進し、アプリケーションを軸に空港の利用体験をアップデートすることで、新たな成長戦略を構築している。
ユーザー側においては「内製化」もキーワードの一つとなっている。8月1日・1933号では「現場主導のデジタル改革 kintoneによる『脱・表計算』のステップ」と題し、サイボウズのノーコードツール「kintone(キントーン)」を使ってバックオフィス業務の変革に挑む企業を紹介した。従来のような情報システム部門やITベンダー任せではなく、現場全体の主体的な関わりによるデジタル化を実現するために、kintoneなどのツールが果たす役割は大きい。
9月12日・1938号掲載
大手企業によるDXも本格的に進んでいる。家電量販大手のビックカメラは6月、「DX宣言」を公表し、米Salesforce(セールスフォース)や米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)などのソリューションによる基幹システムのクラウドリフト、CRM基盤の構築などを進める方針を掲げた。9月12日・1938号「ビックカメラのDX宣言 『顧客中心』の企業変革は何を目指すか」で、その狙いを報じた。
同社は顧客を中心に置いてビジネスのあり方を変革し、顧客体験を向上させるためにデジタルの力を取り入れる。これがDXの「一丁目一番地」だとし、オンライン、オフライン問わず顧客とのエンゲージメントを高め、長期的な関係性の構築を目指している。
ITを活用して成長を図るには、ただツールを導入すればいいというものではないだろう。企業文化を根本から見直し、デジタルに対応した組織づくりを進めていくことが求められている。ベンダーも単にソリューションを提供するだけでなく、組織変革を支える役割が期待されている。
(構成/藤岡 堯、大畑直悠、大向琴音、日高 彰、大蔵大輔)

Review 1
生まれ変わるパートナーエコシステム
22年は大手ベンダーでパートナーエコシステムを見直す動きが広がった。クラウドへの対応やデジタルトランスフォーメーション(DX)需要の高まりなどによる、新たなビジネスモデルに対応するため、より多様な形へと生まれ変わっている。4月18日・1919号の「ビジネスモデルの多様化に対応する ITインフラ各社のパートナー戦略」では、米Microsoft(マイクロソフト)、米Nutanix(ニュータニックス)、米Dell Technoligies(デル)のインフラ3社を中心に取り組みを伝えた。各社とも製品販売からサービス提供型へと収益モデルを移行させる中で、パートナーのビジネス変革を促すためのプログラムを打ち立てた。
自社の成長のために、パートナーエコシステムを重要視するのはセールスフォース・ジャパンだ。6月13日・1926号「拡大続くセールスフォースのエコシステム もたらす価値は多岐に」は、拡大を続ける同社のエコシステムの現状に迫った。DX需要の増加などに伴い、同社のパートナー数は急増。もたらす価値は多岐にわたっており、エンドユーザーによる外販やパートナー同士の連携、事業変革にもつながっている様子をレポートした。
12月5日・1948号「米Kyndrylのパートナー戦略、急速に進むアライアンス展開は何を目指すか」は、Kyndryl(キンドリル)のパートナー戦略が進む道を解説。連携によって、キンドリルにもパートナーにも価値が生まれるだけでなく、その組み合わせによって顧客にも価値を届け、3者が「Win-Win-Win」の関係になるアライアンスこそが求められていることを報じた。
国内において拡大を図るために、パートナーエコシステムの活用が最重要課題となるベンダーは多く、来年も新たな戦略が増えそうだ。一方でパートナー企業もまた、新時代のビジネスモデルに対応するため、あり方を模索する必要があると言える。あくまで両輪として、社会課題の解決に臨む姿勢が求められるだろう。

Review 2
マネジメント改革のショーケースに
人事制度をはじめとするマネジメント改革は今もなお、多くの企業にとって重要な経営課題となっている。そのためのソリューションを提供する立場であるITベンダーもまた、最新の技術、考え方を活用し、自社を変革させている。いわば、ユーザー企業に対する「ショーケース」としての役割を果たしているのである。デジタル化の進展や国内労働人口の減少などにより、大手企業が続々と「ジョブ型雇用・人事制度」の導入を発表している。とりわけ、ジョブ型に親和性の高い業界であるITベンダーが先進的な動きを見せている。7月4日・1929号「機運高まる『ジョブ型』の現在地 大手ITベンダーが進める人材マネジメントの要諦」は、日立製作所と富士通の取り組みを通じて、ジョブ型制度の実情や意義を探った。
グローバルで競争力を高めるために、優秀な人材の獲得・育成につながるジョブ型制度は不可欠となるが、その本質はいまだ理解されていない面もある。ベンダーが先駆的にモデルを示し、国内企業が人材開発に積極的にコミットメントする流れが生まれることが望まれる。
働き方改革に関しては、オフィスのあり方も検討点となっている。オフィス回帰へと進む前に、「オフィスは何のために存在するのか」という問いを再考すべきである。12月12日・1949号「外資ベンダーの事例で探る コロナ後におけるオフィスのあり方」では、米Workday(ワークデイ)日本法人、SAPジャパン、Okta Japanの3社の新拠点から、コロナ後にふさわしいオフィスの姿を考えた。
3社ともに共通するのは「コミュニケーションやコラボレーションのための空間」としてオフィスをとらえている点であり、そのために各社は各様の工夫をこらしている。ただし、それは設備を整えるだけで、実現されるものではない。社員一人一人への意識づけ、自由に働けるための人事・評価制度の確立など、ソフト面での課題も少なくない。オフィスをどう定義づけ、社員の生産性向上につなげていくかを、経営層は真剣に考えなくてはならないだろう。
Review 3
ユーザー企業の成熟度深まる
ユーザー企業では、デジタル技術の活用に対する成熟度がさらに深まった1年だった。特集でもITを積極的に取り入れ、ビジネス成長につなげる企業がいくつも登場した。6月20日・1927号「航空需要V字回復の波をつかめ! 羽田空港の利用体験向上で収益最大化 日本空港ビルデングが挑むワン・トゥ・ワン・マーケティング」は、データを活用した顧客体験の向上施策を加速させた日本空港ビルデングの事例を解説。同社はデジタルマーケティングを推進し、アプリケーションを軸に空港の利用体験をアップデートすることで、新たな成長戦略を構築している。
ユーザー側においては「内製化」もキーワードの一つとなっている。8月1日・1933号では「現場主導のデジタル改革 kintoneによる『脱・表計算』のステップ」と題し、サイボウズのノーコードツール「kintone(キントーン)」を使ってバックオフィス業務の変革に挑む企業を紹介した。従来のような情報システム部門やITベンダー任せではなく、現場全体の主体的な関わりによるデジタル化を実現するために、kintoneなどのツールが果たす役割は大きい。
大手企業によるDXも本格的に進んでいる。家電量販大手のビックカメラは6月、「DX宣言」を公表し、米Salesforce(セールスフォース)や米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)などのソリューションによる基幹システムのクラウドリフト、CRM基盤の構築などを進める方針を掲げた。9月12日・1938号「ビックカメラのDX宣言 『顧客中心』の企業変革は何を目指すか」で、その狙いを報じた。
同社は顧客を中心に置いてビジネスのあり方を変革し、顧客体験を向上させるためにデジタルの力を取り入れる。これがDXの「一丁目一番地」だとし、オンライン、オフライン問わず顧客とのエンゲージメントを高め、長期的な関係性の構築を目指している。
ITを活用して成長を図るには、ただツールを導入すればいいというものではないだろう。企業文化を根本から見直し、デジタルに対応した組織づくりを進めていくことが求められている。ベンダーも単にソリューションを提供するだけでなく、組織変革を支える役割が期待されている。
新型コロナ禍はデジタルによる社会変容を加速させた。2022年のIT業界は、その変革のニーズに対応するため、ベンダー自身もまた変化に挑み続けた1年だったと言えるだろう。ビジネス面ではソリューションをより広く届けるためのパートナーエコシステムを見直し、社内マネジメントにおいては、ベンダーが率先して新たなモデルを打ち立てる姿が見られた。他方、ユーザー企業のIT成熟度も深まり、モデルとなりうるケースが増えている。22年の本紙特集を振り返り、来年のさらなる飛躍に向けたヒントを探る。
(構成/藤岡 堯、大畑直悠、大向琴音、日高 彰、大蔵大輔)
Review 1
22年は大手ベンダーでパートナーエコシステムを見直す動きが広がった。クラウドへの対応やデジタルトランスフォーメーション(DX)需要の高まりなどによる、新たなビジネスモデルに対応するため、より多様な形へと生まれ変わっている。
4月18日・1919号の「ビジネスモデルの多様化に対応する ITインフラ各社のパートナー戦略」では、米Microsoft(マイクロソフト)、米Nutanix(ニュータニックス)、米Dell Technoligies(デル)のインフラ3社を中心に取り組みを伝えた。各社とも製品販売からサービス提供型へと収益モデルを移行させる中で、パートナーのビジネス変革を促すためのプログラムを打ち立てた。
4月18日・1919号掲載
自社の成長のために、パートナーエコシステムを重要視するのはセールスフォース・ジャパンだ。6月13日・1926号「拡大続くセールスフォースのエコシステム もたらす価値は多岐に」は、拡大を続ける同社のエコシステムの現状に迫った。DX需要の増加などに伴い、同社のパートナー数は急増。もたらす価値は多岐にわたっており、エンドユーザーによる外販やパートナー同士の連携、事業変革にもつながっている様子をレポートした。
12月5日・1948号「米Kyndrylのパートナー戦略、急速に進むアライアンス展開は何を目指すか」は、Kyndryl(キンドリル)のパートナー戦略が進む道を解説。連携によって、キンドリルにもパートナーにも価値が生まれるだけでなく、その組み合わせによって顧客にも価値を届け、3者が「Win-Win-Win」の関係になるアライアンスこそが求められていることを報じた。
国内において拡大を図るために、パートナーエコシステムの活用が最重要課題となるベンダーは多く、来年も新たな戦略が増えそうだ。一方でパートナー企業もまた、新時代のビジネスモデルに対応するため、あり方を模索する必要があると言える。あくまで両輪として、社会課題の解決に臨む姿勢が求められるだろう。
(構成/藤岡 堯、大畑直悠、大向琴音、日高 彰、大蔵大輔)

Review 1
生まれ変わるパートナーエコシステム
22年は大手ベンダーでパートナーエコシステムを見直す動きが広がった。クラウドへの対応やデジタルトランスフォーメーション(DX)需要の高まりなどによる、新たなビジネスモデルに対応するため、より多様な形へと生まれ変わっている。4月18日・1919号の「ビジネスモデルの多様化に対応する ITインフラ各社のパートナー戦略」では、米Microsoft(マイクロソフト)、米Nutanix(ニュータニックス)、米Dell Technoligies(デル)のインフラ3社を中心に取り組みを伝えた。各社とも製品販売からサービス提供型へと収益モデルを移行させる中で、パートナーのビジネス変革を促すためのプログラムを打ち立てた。
自社の成長のために、パートナーエコシステムを重要視するのはセールスフォース・ジャパンだ。6月13日・1926号「拡大続くセールスフォースのエコシステム もたらす価値は多岐に」は、拡大を続ける同社のエコシステムの現状に迫った。DX需要の増加などに伴い、同社のパートナー数は急増。もたらす価値は多岐にわたっており、エンドユーザーによる外販やパートナー同士の連携、事業変革にもつながっている様子をレポートした。
12月5日・1948号「米Kyndrylのパートナー戦略、急速に進むアライアンス展開は何を目指すか」は、Kyndryl(キンドリル)のパートナー戦略が進む道を解説。連携によって、キンドリルにもパートナーにも価値が生まれるだけでなく、その組み合わせによって顧客にも価値を届け、3者が「Win-Win-Win」の関係になるアライアンスこそが求められていることを報じた。
国内において拡大を図るために、パートナーエコシステムの活用が最重要課題となるベンダーは多く、来年も新たな戦略が増えそうだ。一方でパートナー企業もまた、新時代のビジネスモデルに対応するため、あり方を模索する必要があると言える。あくまで両輪として、社会課題の解決に臨む姿勢が求められるだろう。

この記事の続き >>
- Review 2 マネジメント改革のショーケースに
- Review 3 ユーザー企業の成熟度深まる
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