2024年も国内ITビジネスは着実に成長を続け、日本市場への大型投資を図る外資大手、エンタープライズへの浸透に注力するSaaSベンダー、多地域で連携し、クラウドの地方展開に挑むSIerなど、多くのプレイヤーが新たなステップを踏み出した。オンプレミスもまた新たな技術によって進化し、ユーザーの選択肢はさらに多様化している。週刊BCN編集部が注目したニュースを通じて、24年のトレンドを紹介する。
米Oracle 日本に約1兆2000億円を投資
米Oracle(オラクル)は4月18日、日本向けに今後10年間で80億ドル(約1兆2000億円)を投資する計画を明らかにした。沸騰するAI需要や、自国の規制や法律などに準拠してユーザーが国内でデータを保有・管理できる「データ主権」の潮流加速に対応するため、データセンター(DC)の増強や運用・サポート人員の充実を図り、「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」の事業を拡大する。
同日、都内で会見したサフラ・キャッツCEOは「投資額は最低限だ。日本でのビジネス状況や、私たちが感じている旺盛な需要を踏まえ、実際にはさらに投資することになっても不思議ではない」と意欲を見せた。投資についてオラクルは、生成AIの爆発的な普及に伴うクラウドサービスへのニーズに応えることに加え、データ主権への取り組みも強調。データ主権の考えは地政学的リスクの高まりを背景に、経済安全保障の観点などから、グローバルで関心が高まりつつある。
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4月29日・2012号掲載)
米Oracle サフラ・キャッツCEO
サイボウズ kintoneの大規模導入促進へ施策強化
サイボウズはノーコードツール「kintone」の大規模導入促進に向けた取り組みを強化する。エンタープライズ企業や大規模導入向けのパートナー認証制度を新たに設け、価格体系にも新コースを用意した。kintoneは部門導入にとどまるケースが多く、単価の伸び悩みが指摘されており、新施策を通じて顧客規模の拡大を図る。青野慶久社長は「kintoneをいかに全社的な情報共有プラットフォーム・DX基盤とするかという部分にビジネスをシフトする。パートナー、顧客双方を啓発できる仕組みとしたい」と期待を寄せる。
同社は従業員規模1000人以上の企業をエンタープライズ企業と位置付けている。認証を通じてエンタープライズ向けや大規模導入を得意とするパートナーを明確にすることで、ユーザー側が課題やニーズに応じたパートナーを選びやすくする狙いだ。青野社長は制度について「狭き門」と表現し、技術、体制、実績のいずれの要素もそろえたパートナーを厳選する考えを示す。
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7月8日・2021号掲載)
サイボウズ 青野慶久 社長
ヘプタゴンなど3社 企業間コミュニティー「re:light local」設立
アマゾン・ウェブ・サービス・ジャパン(AWSジャパン)のパートナー企業であるヘプタゴン(青森県三沢市)、エイチビーソフトスタジオ(松山市)、Fusic(福岡市)の3社は、地方におけるクラウド活用を推進する企業間コミュニティー「re:light local」を設立した。ヘプタゴンの立花拓也社長は「大都市圏では集まらない地方ならではの事例を共有する場をつくり、クラウド活用を加速したい」と意気込む。
re:light localは地方に拠点を置くクラウドの専門家やユーザー、開発者のハブを目指すコミュニティー。主な活動方針としては、各地域でイベントを年4回実施し、地場のIT企業やDXに取り組みたい事業会社を招いて知見や事例を共有できる場を創出する。設立の理由について、立花社長は「地方でクラウド活用の支援を進めていると、東京をはじめとした大都市圏の事例をまねしてもうまくいかないケースが多く、地方の企業同士が直接つながり情報交換できる場の必要性を感じた」と説明する。
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7月15日・2022号掲載)
ヘプタゴン 立花拓也 社長
ニュータニックス・ジャパンなど3社 オンプレミス用の生成AIサービスで協業
ニュータニックス・ジャパン、DataRobot Japan、日立システムズの3社は10月10日、オンプレミスで利用できる生成AIソリューションで協業を開始した。生成AIアプリケーションの構築に必要なインフラや開発環境、コンサルティングなどをで提供。公共部門、金融・製造などの大企業に訴求する。
大規模言語モデルの運用に最適化したITインフラ基盤「GPT-in-a-Box 2.0」の構成要素である「Nutanix Kubernetes Platform」上で、AIの開発や管理、監視などを一元化する基盤「DataRobot AI Platform」を稼働させ、AIモデル構築などの仕組みを提供。日立システムズはAI向けインフラの実装や運用などを担う。ニュータニックス・ジャパンの金古毅・コーポレートバイスプレジデント兼社長は「AI利活用にはさまざまなコンポーネントが必要で、多岐にわたるテクノロジーを束ねる人材が不可欠」とし、協業の意義を訴えた。
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10月21日・2034掲載)
ニュータニックス・ジャパン
金古 毅
コーポレートバイスプレジデント兼社長