1924年の創業以来、変化するニーズをとらえた各業種・業務向けのシステムソリューションやIT機器を提供し続ける日本事務器(NJC、田中啓一社長)。NJCが得意にする「民間企業」「医療・福祉」「公共・文教」分野で、実に1万3000件を超える導入実績がある。そのNJCが、中期的な強化ポイントに置くのが、クラウドに代表されるサービス事業の拡大。今年度(12年3月期)下期が始まる直前、代表取締役社長である田中啓一氏に、今後の戦略を聞いた。

クラウド専門部隊も組織

 日本事務器(NJC)は、1000人規模の体制で、全国をカバーする営業・サービス網をもち、情報システムの企画から設計・構築、運用・保守までをワンストップで提供できる事業基盤がある。全国の企業・団体に均一のトータルソリューション&サービスを届けることができる数少ないSIerだ。民間企業だけでなく医療・福祉、公共・文教機関にも強く、お客様の業種や業務の特性にあわせた最適なソリューションを長年にわたって提供。確固たる地位を築いている。

 田中啓一社長は、今年度上期を振り返って、「東日本大震災でマイナスの影響は出たが、大都市圏だけでなく、地方から大型案件が複数出ている」と状況を語り、持続的な成長に手応えを感じている。

代表取締役社長 田中啓一 氏

 今年度の戦略を推進しながら、中期的な視点で力を入れるのが「サービス事業」だ。田中社長は、「すべて自社でつくるのではなく、オープン技術を採用したり、情報系サービスを活用したクラウドソリューションの提供など、サービス化へのシフトをより一層進め、変革を遂げる」と中期的な方向性を示す。

 田中社長は「時代に合わせて、お客様のニーズにすぐに対応できるような商品提供形態にしていきたい。買い取り型の製品(従来型SI)は、買った途端に陳腐化が始まるといっても過言ではない。お客様に常に最新のIT環境を使い続けていただくとなると、当然クラウド型が適している。クラウドやサービス型のシステムのニーズが爆発的に強まったとき、サービスのノウハウを数多くもっている企業でありたい」と話す。「NJCの強みは、基幹系システムの構築・運用を長い間、数多く手がけてきたこと。これを軸にして、先進的なサービスを提供できるよう、準備している」と続ける。

 サービス事業強化の姿勢は、今年度期首に改編した組織にも反映している。NJCでは、クラウドを推進する組織を、昨年度までプラットフォーム関連事業部門内に設けていたが、今年度からは「クラウドサービス事業推進部」として独立させた。田中社長は、「各事業部門から、クラウド関連サービスのアイデアが続々と出てくる企業文化ができつつある。新部門では、それらの声に集約して、スピーディに次世代の商品開発を進められるようにする」と話している。

クラウドサービス続々登場

 アイデアが形になった最新のサービスが、今秋発売の「手軽にカルテ」というクラウドサービスだ。ドラッグストアが店のお客様に向けて展開するヘルスケアアドバイス・サービスを支援するソフトで、月額課金型で提供する。

 健康増進拠点づくり検討会議とともに開発した特定保健指導用システムのエンジンを活用し、子育て世代の女性をターゲットに、健康管理のプランなどをアドバイスする。クラウド型なので、店舗ごとにサーバを設置しなくても導入でき、ドラッグストアのお客様は、自分のデータにインターネット経由でアクセスすることができる。リピーターや優良顧客をつくりたいドラッグストアの要望に合わせて開発した。

 田中社長は、「『手軽にカルテ』は、医療と民間企業分野のノウハウをもち、クラウドを手がけているNJCだからこそ提供できるサービス。売り上げの履歴だけでなく、健康状態まで把握することで、顧客の囲い込みを強化できる。クラウドサービスなので、価格構造は規模別にアカウント単位の月額料金を想定している」とサービスの特色を説明する。

 さらに、NJCは「Google Apps」の開発パートナー認定を取得しており、正規販売代理店となっているが、250以上のアカウント販売が可能になった。Google Appsは急成長するスマートフォンなどのモバイルデバイスと親和性が高く、関連ソリューションもつくりやすい。

 従来型のビジネスを安定的に伸ばしながら、着々とクラウド事業を育てているNJC。クラウドサービスの強化によって、新たなSIerの姿を目指しているNJCに、今後も注目していきたい。