日立システムズ
スマートデバイスの活用を支援
キッティング能力を月1万台規模に

　大手SIerの日立システムズは、スマートデバイスのキッティングサービス対応可能台数を、キッティング作業の一部自動化やスペースの拡大、ノウハウの手順化、作業手順の見直しなどにより、従来の5倍に相当する月1万台まで拡充した。同社はスマートデバイスの導入計画策定から、キッティング（端末の設定）、運用・保守、セキュリティ対策、クラウド環境を活用した業務アプリケーションの提供、さらにはヘルプデスクサービスまでワンストップで提供している。今回の体制強化により、スマートデバイスのキッティング処理能力では国内ベンダーで有数の規模となり、業務にスマートデバイスを活用したいという企業のニーズに応える。 

●引き合いが急増中

　キッティングサービスとは、ユーザーが購入したIT機器を使える状態に設定するアウトソーシングサービスである。日立システムズは、パソコン（PC）では累計75万台のキッティング実績があり、全国約300か所の保守サービス拠点網を活用したオンサイトサービスも展開している。

　スマートフォンやタブレット端末といったスマートデバイスを業務で活用したいという企業ニーズの高まりを受けて、日立システムズは今年4月から「スマートデバイストータルマネージドサービス」を本格的に立ち上げた。スマートデバイス推進センタの前田担当部長によれば、「予想を上回る引き合いがあった」と、出足は上々だったようだ。ニーズの高まりを受けて、今年9月に従来の5倍に相当する月1万台規模にキッティング能力を増強した。日立システムズグループでサポート・サービスなどを手がける日立システムズ・テクノサービスの磯崎営業統括部長は、「昨年の段階では半信半疑だったが、現在は数万台規模の引き合いがきている」と話す。こうした引き合いに対応するために、今回体制を増強した首都圏と関西のキッティング拠点は、単に作業スペースが広いだけではない。携帯電話番号や業務情報などを取り扱うため、指静脈型の生体認証装置など三重の入退室管理を行って、データセンター並の情報セキュリティを施し、物理セキュリティを確保している。引き合い状況を踏まえ、早い段階で東海地区にもキッティング拠点を開設する予定だ。

●ワンストップサービスが強み

　スマートデバイスはPCと異なり、通信キャリアのサービスと連動することが多い。従って、通信キャリアの方針や機種によって、端末にアクセスできる権限、いわゆる「ルート権限」が制限されるケースがある。日立システムズ・テクノサービスシステムソリューショングループの山根課長は、「スマートデバイスはPCと比べて端末へのアクセスが制限されており、設定のすべてを自動化することはできない」と、設定の難しさを指摘する。そのため、人手による設定が発生してミスも生じやすくなるが、日立システムズでは、設定後の動作検証を自動化するなど、さらなる品質向上に努めている。

　また、スマートデバイスは通信回線に常時接続して使うことが多く、業務アプリケーションがクラウド側にあるケースも多い。そのため、ベンダーには端末の提供・設定だけでなく、ネットワーク構築やセキュリティ対策を含め、トータルでサポートすることが求められる。その点、日立システムズは、日立グループのクラウドサービス「Harmonious Cloud」の下、全国のデータセンターを生かして多種多様な業務アプリケーションを提供する業界屈指のクラウドサービス事業者。これに同社が運用する仮想デスクトップ型の業務実行環境「Dougubako」のような業務基盤や、今回体制を強化したキッティングサービス、全国のサポート拠点を活用したオンサイトサービス、端末管理サービス（MDM）、コンタクトセンターによるヘルプデスクなどのマネージドサービスを組み合わせることで、導入をワンストップでサポートできるのが大きな強みだ。今後は地場のSIerやソフト開発ベンダーと組むなどして販路を拡大し、2015年度にはサービス全体で累計約280億円の売り上げを見込む。


（写真／津島隆雄）