SIerのビッグデータ分析サービス事業への取り組みが活発化している。BI(ビジネスインテリジェンス)やDWH(データウェアハウス)をはじめとするデータ分析で培ったノウハウに加え、現代版EDI(電子データ交換)ともいえるビジネスマッチングのプラットフォームの確立を視野に入れる。すでに一部のSIerは、ソーシャルメディアやユーザー企業を取り巻くデータの収集に取り組むとともに、ビジネスマッチングのプラットフォームを提供する動きもみせている。
幅広い部門からの需要を見込む
SIerは、もともとBIやDWHなどを販売してきた経緯から、データ分析に関する一定の知見を蓄積していることが多い。ソーシャルメディアに関しては、データの外販を手がけているソーシャルメディア事業者もあり、まずはこうしたメジャーな情報をベースに、ビッグデータ分析サービスを提供するケースが増えている。
ビッグデータの活用例としては、ソーシャルメディアなどの膨大なデータをもとに消費者トレンドを把握したり、イベントやキャンペーンの反響を調べたりするマーケティングや商品開発、あるいは顧客サポート窓口であるコンタクトセンターに集まる情報を積極的に分析する「アクティブサポート」ツールに応用することなどが挙げられる。人事・採用部門では企業イメージや会社説明会後の反響の調査などにも活用できる。
これまでは高額なBIやDWHのツールを販売してきたSIerだが、こうしたツールの多くは価格が高いだけでなく、データ分析の専門家しか有効に使えないために、広く一般の企業が使うレベルへの浸透は難しかった。この点、ビッグデータ分析はマーケティングや営業、人事・採用部門に至るまで幅広くニーズが見込める魅力がある。さらに、分析に活用するプラットフォームをSIerが運営し、ユーザーにはサービスとして使ってもらうことで使い勝手が大幅に向上する見通しだ。
現代版EDI、緩やかな企業連合へ
しかし、ソーシャルメディアなど自らデータ発生源をもたないSIerにとって、他社から仕入れた情報を分析・販売するだけでは、将来のビジネス拡大の余地は限られる。そこで登場するのが、「ビジネスマッチング」のプラットフォームとしての役割である。
たとえれば企業間取引で発生するデータを交換するEDI(電子データ交換)的な発想で、SIerはデータのトラフィックに応じて課金する。課金単価は小さくても、データが増えれば増えるほど安定したストック型収益となる。EDIはサプライヤーとメーカー、小売りなどを、ある意味、固定的に結びつけるデータ交換サービスだが、ビッグデータは同じようにメンバー構成でも、EDIよりははるかに緩やかな企業連合プラットフォームだ。
また、ポイントカードや電子マネーなどで異なる業種・業態でマーケティングデータを共有する動きに加え、今後はソーシャルメディアやスマートデバイスから発せられる各種情報、M2M(マシン・トゥ・マシン)といった多様なデータも分析対象となることが予測される。こうしたユーザー企業が持ち寄る多様なデータを分析するプラットフォームへのニーズを足がかりに、SIerはより広範囲な企業連合を促進していくビジネスマッチングの場を提供するポジションを占めていくことが期待される。
次の記事では、日立システムズのビッグデータ事業の取り組みをレポートする。