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日本事務器 創業100周年を見据えて サービス+グローバル強化戦略が本格始動

2015/02/05 19:55

週刊BCN 2015年02月02日vol.1565掲載

 歴史の浅いIT業界において、創業から100年近く存続している企業は極めて稀な存在だ。日本事務器はその一社で、2014年2月に創業90周年を迎えた。大きな節目を迎えた2014年、田中啓一社長は、顧客や協力会社への感謝を伝えながらも、平行して100周年に向けた長期戦略を立てた。それは、グローバル市場への挑戦と、ストック型サービスビジネスの強化。伝統を重んじながらも、新たな取り組みに果敢に挑む日本事務器の長期ビジョンを田中社長に聞いた。

顧客目線の姿勢は不変 それが90年を支えた

田中啓一社長
 日本事務器は、「ヘルスケア」「文教・公共」「民間企業」分野向けITソリューションを得意にしている。事務機器の販売からスタートして、コンピュータの販売事業に参入。今では、クラウドベンダーの顔をもっている。新しい製品・サービスを次々と取り入れ、業容を拡大させてきた俊敏性も、日本事務器の強さだ。

 田中社長はこの90年を振り返り、「日本事務器にはカリスマ経営者はいないし、創業以来続いている看板商品というものもない。お客様と直接触れあい、ビジネスに貢献する姿勢を創業時から大切にし、それを受け継いでいる。この信念を守っているからこそ、90年もビジネスを継続することができた」と話している。

不可欠な海外事業への挑戦 来年度に初のグローバル拠点を設置

 90周年という節目を迎えた2014年、90周年の御礼を伝えるための顧客訪問と感謝イベントを行うと同時に、田中社長は、10年先を見据えた長期ビジョンを定めた。「正直にいえば、変化の激しいIT業界で10年先の姿を明確に描くことなんてできない。ただ、『グローバル市場への進出』と、私が社長に就任した頃から掲げている『ストック型サービス事業の強化』は、この先10年、持続的成長のために必要なこと。ここにリソースを集中させることは決めている」と重点領域を語ってくれた。

 田中社長は数年前から海外ビジネスの可能性を感じていたものの、国内よりもリスクが大きいために慎重だった。2~3年かけて、数か国の海外視察を自ら行い、東京で専門チームを立ち上げて、海外市場を調査してきた。「2014年になって、海外でもビジネスが展開できそうな感触を得た。ターゲットは東南アジアで、2015年度(2016年3月期)中に現地に拠点を設置して、駐在員を派遣する」方針を決めた。「海外ビジネスがすぐに成功するとは思っていない。果敢にチャレンジしながら、歩みは遅くても、一歩ずつ先に進めることができたらいい。時期は定めないが、将来は全売上高のなかで20%程度を海外で売り上げることを目指す」(田中社長)。

 海外市場でビジネスを展開するには、日本だけでなく、世界で実績がある製品を取り扱うべきとの判断から、システム開発ツールやプロジェクト管理ツール、そして顧客に提供する商材もグローバルスタンダード製品に移行している。来年度には、商材調査のために北米に拠点を設置することを検討していて、グローバルビジネスを支える体制を築く考えだ。

社長就任時からぶれない戦略 サービス事業へのシフト

 一方、サービスビジネスの強化は、田中社長がトップ就任時から一貫している「ぶれない戦略」。日本事務器は、老舗のSIerだけに、オンプレミス型システムの開発と、運用・保守サービスで多くの顧客を獲得しており、それが日本事務器の経営を下支えしている。それでも、クラウド化の流れは確実に進むという判断の下、ITリソースをサービスとして提供し、売り切りではなく、毎月/毎年に顧客から料金を徴収するストック型のサービスビジネスモデルへの移行を推進している。「私たちは、ストック型サービスをハードウェアの保守などの『レガシーサービス』と、クラウド関連の『ニューサービス』に区分けしている。重視しているのは、当然、ニューサービス。クラウド関連の商材を増やして、ストックサービス事業を全売上高の50%を占めるまでに伸ばす」という。

 グーグルの「Google Apps」やセールスフォース・ドットコムの「Chatter」などのクラウドに、自社利用して得たノウハウを加えて販売しているほか、自社ソリューションをクラウド化し、商材を揃えている。

 長い年月をかけて蓄積してきた顧客の業務への造詣と興味をもつというDNA、変化を見越して柔軟に業容を進化させる俊敏性。それが、日本事務器の強み。100周年に向けて、「変えてはならないこと」と「変わるべきこと」を意識しながら、さらなる進化を遂げるはずだ。
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日本事務器=http://www.njc.co.jp/