今年3月に執行役員 パートナー事業 アライアンス事業統括本部長に就任した日本IBMの岡田和敏氏にパートナー事業の戦略をたずねた。「IBMがカバーできていないホワイトスペース」「新事業モデルの立ち上げ」「ローカルカバレッジの強化」の三点にフォーカスし、パートナーの生き残りに欠かせない「企業価値」向上のために人材育成をサポートする取り組みを強化していくという。

パートナーに向けた「三つのフォーカス」で市場を拡大

 「今では多くの企業が基幹系システムについてはコストを削減し、現場、つまりLoB(Line of Business:主要事業部門)に向けて、多くのIT予算を割り振る傾向が経営者の間で明確になってきた。そして、LoBから求められるのは「今、すぐにほしい」という迅速性だ。従来のウォーターフォール型開発のように、時間をかけて仕様を決め、設計し、構築するというやり方では、ニーズに対応できない」と岡田執行役員は強調する。

 こうした流れのなかで岡田執行役員がパートナー事業 アライアンス事業においてフォーカスしていくのが、「IBMがカバーできていないホワイトスペース」「新事業モデルの立ち上げ」「ローカルカバレッジの強化」の三点である。

 第1の「IBMがカバーできていないホワイトスペース」では、各インダストリーの直販部隊がしっかりとカバーしてきたIBMが伝統的に強い分野以外の領域を、パートナーとの協業体制によってカバーしていく。

パートナー事業 アライアンス
事業統括本部長 執行役員
岡田和敏 氏



 岡田執行役員は、「IBMはCAMSS(クラウド、ビッグデータ&アナリティクス、モバイル、ソーシャル、セキュリティー)などの分野について、すぐれた製品やサービスをパートナーに提供し、パートナーの方々にエンドユーザーに向けてデリバリしてもらう。その活動を通じてエコシステムを構築していく」という。

 そのための具体的な取り組みの一つが、ビジネスパートナー向けの経営分析サポート「BTI(Business Transformation Initiative)ワークショップ」だ。パートナーのビジネスを診断・分析し、事業戦略とのギャップなどを発見して、今後強化していく点を提案するサービスである。従来「System x」を扱っていたパートナーを中心に、有力な10社余りに実施したという。

 第2は「新事業モデルの立ち上げ」だ。 

 「政府の方針や施策の変化に伴って、新しい事業の可能性が生まれている。具体的にはヘルスケアやライフサイエンスの分野を考えている。こうした分野も、やはりIBMがご支援できる部分が多い。その分野に向けて、パートナーと協業していきたい」と岡田執行役員は語る。

x86サーバーをもたない中立の「強み」

 第3は、「ローカルカバレッジの強化」。 
 日本IBMとしては、各地域の中堅企業でのビジネスをさらに強化していかなくてはいけない。その強化は長年の課題となっている。

 「日本の各地域の産業やエンドユーザーに精通する有力なパートナーの方々との連携をさらに強化したい。各地域のパートナーの方々にIBMの先進的なテクノロジーを提供することで、新しいソリューションの開発とエンドユーザーへの提案力を強化していただけるようにご支援したい」と語る。

 そのため、岡田執行役員は3月に着任してからの4か月間で全国の主な地域を回り、大手顧客、中堅企業の顧客、IBMのパートナー、IBM以外のパートナーの方々など、約1000人と名刺交換をして、意見交換をしてきたという。「今の顧客のニーズ、IBMのパートナーがわれわれに要望すること、IBM以外のパートナーは、何を求めているのかなど、原点に戻って整理してきた」。すでに、契約を目前に控える有力パートナーも数社あるという。

 「各地域の有力なパートナーの方々は、他社のサーバーを担いでおられるところが多いが、『System x』を売却して、IBMブランドのx86サーバーをもたないわれわれは、中立の立場で提案できることも強み。加えて、IBMには先進的なソフトウェア製品がある」という。

企業価値を生み出すために

 岡田執行役員は、今後、パートナーのさらなる成長のカギとなるのは「企業価値」と語る。「パートナーの方々の強みは、直接、エンドユーザーと取引していることにある。成長を続ける企業とは、ユーザーとの強固な関係を築くこと。もう一つは、他社が参入しない(あるいは、できない)専門分野をもっていること。それを『選択と拡大』していくことが大切だ」。

 ユーザーとの強固な関係の構築も、他社との差異化となるニッチエリアをもち、拡大していくにも、不可欠なのが「人材育成」だ。今、ユーザーの求めに応じて、いち早くシステム構築を実現できる技術者の存在こそが「企業価値」となる。そこでパートナーの「人材育成」をサポートする取り組みを強化している。

 「人材育成ということでは、多くのローカル企業は後継者問題も抱えている。そこで前述した経営者向けのBTIワークショップでも、後継者問題も含めて経営ビジョンの確立に向けたアセスメントを実施し、そのうえでビジョン実現のためのアプローチを探るというやり方をとっている」と話す。

ITで日本企業の活性化をサポートする

 加えて、岡田執行役員が強調するのが社員のモチベーションを高めることだ。

 「人材が力を発揮するには、経験×努力、そしてモチベーションが欠かせない。そのためにも社員が共感できる経営ビジョンをきちんと整備することだ」という。

 さらにパートナーの「人材育成」では、2014年2月に開始した新しい教育イニシアチブ「THINK Academy」も用意する。主にCAMSSの分野について、パートナーがIBMの戦略をベースに顧客との対話を進めるためのさまざまなコンテンツを提供するほか、テーマごとのワークショップも開催している。

 「縮小する国内市場で台数のシェア争いをしている時代ではなく、メーカーの垣根をなくしたい。これまでメインフレーム、クライアント/サーバー(C/S)型システム、現在のCAMSSへとプラットフォームが変化してきた。CAMSSという第3のプラットフォームに、多くのパートナーの方々に乗ってもらうことが私のミッション。目指すのは、日本の企業を活性化すること。それにはITの力が必要で、BluemixはLoBが真に求めるニーズに対応することができる典型例の一つである」とアピールする。