国内大手クラウドサービス事業者のニフティと世界トップのクラウドソリューションベンダーのヴイエムウェアがタッグを組むと、どのような新しいクラウドサービスが生まれるのか。それを具現化したものの一つが「ニフティクラウド DRサービス with VMware vCloud Air Technology」だ。「VMware vCloud Air」のテクノロジーを国内で初めてサービスに活用。ニフティの上野貴也・執行役員/CIO(クラウド・IT企画担当)とヴイエムウェアのジョン ロバートソン社長に、今回の協業や国内クラウドサービス市場の未来、パートナー支援策などについて、大いに語ってもらった。
十年来のパートナーシップで実現
──両社の協業によって、ニフティクラウド DRサービス with VMware vCloud Air Technologyが提供されることになりました。まずは、サービス化が実現した経緯を教えてください。 
ニフティ
上野貴也
執行役員/
CIO(クラウド・IT企画担当)
(兼)クラウド事業部長 上野 VMware製品で社内システムを仮想化したのは2006年でしたが、そのころからヴイエムウェアさんとのつき合いが始まりました。仮想化で構築すれば、非常に柔軟にITインフラを利用できる、ということで、まだ仮想化が現在ほど普及していませんでしたが、導入に踏み切りました。この「柔軟にITインフラを払いだせる仮想環境」はまさにクラウドサービスの原型ともいえるもので、これをニフティ社内の利用だけではなく、お客様に対しても提供したいと考えて「ニフティクラウド」を開始しました。
それから当社は一貫してVMware製品を用いてクラウド事業を展開してきたわけですが、VMware製品とより深い連携機能をもったオリジナルのサービスがつくれないか、長年模索しておりました。そのなかで実現したのが、今回のDRサービスです。これにより、オンプレミスでVMware製品を利用しているお客様へも、「まずはDRから」ということでクラウド利用をよりご提案しやすくなりました。
ロバートソン ニフティさんとは、約10年と長きにわたりパートナーシップを組ませていただいています。日本に馴染む製品・サービスをどのように提供すればいいのかなど、たくさんのことを教えていただきました。そのなかでVMware vCloud Airのテクノロジーを採用していただいたことは、大変喜ばしいことだと思っています。
VMware製品は、全世界で50万社、日本でも約1万社に導入していますが、さらにマーケットを広げていきたい。現在、クラウドサービスを導入する企業が増えていますが、他社のクラウドサービスのなかには、一度導入してしまうとオンプレミスに戻せなかったり、クラウドサービスだけサイロ化してしまうといった問題も抱えていたりします。ヴイエムウェアのテクノロジーを基盤にしたサービスなら、そのような制約はありませんし、プライベートクラウドとパブリッククラウドを連携できるハイブリッドクラウドが容易に構築できる。ニフティさんとともに、日本のお客様に対してハイブリッドクラウドを浸透させていきます。
日本のユーザー企業に適したクラウド
──今回のサービスの特徴を教えてください。 上野 今回の新サービスを含むニフティクラウドのサービスラインアップで、ハイブリッドクラウドが整備できるということが一番の強みです。今回のDRサービスでは、オンプレミスの仮想環境からクラウドにレプリケーションができます。仮想マシン(VM)単位でスモールスタートできるので、中小企業を含めて手軽に利用できるのが特徴となります。「DRサービス」として、データのバックアップに最適なのはもちろん、クラウド上でレプリカを通常のVMとして起動できますから、バックアップしたデータの2次利用や3次利用にも適しています。
クラウドサービスが浸透するうえで、ハイブリッドクラウドを見据えて環境を整えるというスタンスは当社もヴイエムウェアさんも共通して掲げていることですが、オンプレミス側の仮想環境はSIerの皆様が構築するケースも多いと思います。したがってクラウドサービス単体で考えるというよりは、オンプレミス側のシステム構築に関するさまざまな強みをもつパートナー企業様のソリューションの一部としてクラウドを提供していくことが、多くのお客様にご利用いただくカギであると認識しています。

ヴイエムウェア
ジョン ロバートソン
代表取締役社長 ロバートソン ここ数年で日本の企業がクラウドサービスを利用する傾向は間違いなく高まっています。具体的には、米国における企業のクラウドサービス利用率が10%に留まるのに対して日本は15%が利用しているという状況です。しかも、2020年には日本では40%まで伸びるとの予測も出ているほどです。
もともとシステムをアウトソーシングするという文化がある日本では、クラウドサービス関連ビジネスで大きなチャンスがつかめるといえます。それには、上野さんもおっしゃるとおり品質とサポートが重要になる。日本を熟知している事業者が提供しているクラウドサービスがお客様にとって有力な選択肢になると確信しています。
また、当社はVMware vCloud Airをより活用しハイブリッドクラウドを実現するパートナーシップを広げるため、これまでサービス事業者様向けに提供してきたプログラムを昨年8月に刷新し、「VMware vCloud Air Network(vCAN)」として提供しています。ニフティさんには昨年11月より同プログラムに参加いただいたことにより、新しいサービスを構築いただく基盤が整ったと感じています。
上野 確かにvCANによって、新しいサービスの創造がより具現化したといえます。その象徴が、今回のDRサービスです。
仮想デスクトップの提供も視野に
──新しいサービスの提供など、今後の強化策を聞かせてください。 ロバートソン 現在、当社で力を入れているのは、「仮想デスクトップ」などモバイルを活用したワークスタイルへの対応です。VMware vCloud Airで提供している「VMware Horizon Air」と、ヴイエムウェアが提供するビジネスモビリティの分野においても、ニフティさんがお客様の要望に適した新しいサービスを創造していただけることに期待しています。
上野 いつでもどこでも自分の机にいるかのように業務が遂行できるワークスペース的な新しいサービスは大きな需要が見込まれると考えています。
──最後にパートナー企業に対するメッセージを。 ロバートソン ベンダーロックインをしないニフティクラウド DRサービス with VMware vCloud Air Technologyは、安心して販売いただけるサービスです。SIとクラウドサービスを組み合わせたビジネスは、今後ますます重要度を増していきます。
パートナー企業様には、ぜひこのようなヴイエムウェアのテクノロジーを活用したクラウドサービスで成功していただきたい。
上野 ニフティクラウドは現在、販売戦略として「パートナーファースト」を打ち出しておりまして、パートナー様のクラウドリテラシーを高めていただける教育プログラムもご用意しております。まだパートナーとしてご参加いただいていない企業様にも、このDRサービスをきっかけとしてニフティクラウドの販売をご検討いただきたい。今後もぜひパートナー企業の皆様とともに、一緒に新しい価値を提供していきたいと考えています。