ワールドワイドのADC(アプリケーションデリバリコントローラ)市場で、国内外ともに圧倒的な地位を確立しているF5ネットワークス(F5)。アプリケーションに関する企業からの要求が高まるなか、現在、物理ADCだけでなく、ソフトウェアベースの「仮想ADC」の提供にも力を入れている。ADC市場でビジネスモデルが変化しつつあるなか、果たしてトップに君臨し続けることはできるのか。今年4月にトップに就任した米国本社のフランソワ・ロコー=ドノ・プレジデント兼CEOに今後の方向性を聞いた。

成長に向けた技術力・人材・社風がトップ就任の理由

――F5に入社しての印象を教えてください。
 
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米F5ネットワークス
フランソワ・ロコー=ドノ
プレジデント兼最高経営責任者
(CEO)

ロコー=ドノ 今年4月に入社し、その前は(キャリア向け通信装置メーカーの)シエナで業務に従事しました。これまでとはビジネスモデルなどが異なるため、新しいチャレンジになります。

――なぜ、F5に入社したのですか。

ロコー=ドノ 理由は三つあります。一つは、戦略的なポジションにいるからです。当社は、アプリケーションのパフォーマンスを高めながらセキュリティを確保するソフトウェアを開発していますが、これは他社にはない技術だと自負しています。ハードウェアに組み込んでアプライアンスとして提供でき、しかもクラウドでも活用できるという点で、実際、お客様やパートナー企業様から高い評価を得ています。二つめは、業績が良く財務面で問題がないこと。戦略的に大きな投資を行うことができます。三つめは、社風・文化です。すべての社員は個々の能力が高い。ですので、入社当時の印象は今でも変わっていません。

――課題はありますか。

ロコー=ドノ どのような企業でもビジネスの拡大を継続するためには、改善が必要です。当社の場合、すぐれた技術をお客様にとって使いやすい、パートナー企業様にとって提供しやすい環境をつくることが重要だと捉えています。

ビジネスの拡大に向けてサブスクリプションモデルの強化へ

――課題を解決するための具体的な策は。

ロコー=ドノ お客様にとって当社の技術が必要な期間は、それぞれ異なります。一方、当社はライセンスで提供しているため、お客様が必要な期間で使えているかといえば、決してそうとはいい切れません。そういった意味では、サブスクリプションで提供しなければならないと考えています。現在、当社の主力製品であるロードバランサーの「BIG-IP」の機能を、ハイパーバイザー上で稼働できる仮想アプライアンスの「Virtual Edition」を提供していますが、これをもっとお客様が望む形態で利用できるようにします。

――提供形態の変更で業績への影響はないのですか。

ロコー=ドノ いつもでどこでも誰でも使える、完全に自由な提供形態は、お客様が望んでいることです。ですので、利用するお客様が必ず増えると確信しています。当社の目指すところは、継続的に成長すること。顧客満足度をさらに高めれば、必ず成功する。これまでも顧客視点のビジネスを徹底的に手がけてきたからこそ、成長できたのです。

仮想ADCで競争激化でも勝てる。日本のパートナーと独自ソリューション開発も

――市場の成長や他社との競争について、現状をどうみていますか。

ロコー=ドノ 主力領域であるADC市場は、当社のシェアが圧倒的に高い。勝ち組といえますし、自負しておりますし、今後も既存の競合には負けないと考えています。ただ、ソフトウェアベースの「仮想ADC」という点では新興ベンダーが出てくる可能性を秘めています。お客様の要望に応えることが第一ですが、将来的に競合になり得るベンダーに負けないためにも、「完全な自由」をコンセプトに掲げているのです。

――仮想ADCでは、競争が激しくなりそうですか。

ロコー=ドノ 実際、競争が出始めている状況です。スタートアップが開発に取り組んでいますし、クラウド事業者が自社のADCをもっている。今後、さらに競争が激しくなることが予想されますが、これまでの技術力と提供形態の強化によって、競争に勝つ体制をさらに整えていきます。

――M&A(企業の合併や買収)によるビジネスの強化も視野に入れていますか。

ロコー=ドノ 当面は有機的な成長、つまり既存事業によって達成される成長を追求します。これまでもADCをベースに成長してきましたし、今後もさらにアプリケーションを安全にストレスなく利用できるようにするニーズが、継続して高まります。

――日本に対する期待は。

ロコー=ドノ 日本市場でも強いポジションにあります。しかも、クラウドやセキュリティ、IoTのニーズが高まっていることからも、当社のビジネスにとって大きなチャンスがあります。そのため、積極的に投資していきます。まずは、プリセールスやポストセールスの人員強化です。また、SIerとのパートナーシップを深めるための投資です。日本独自のソリューション開発に向けた支援を積極的に進めていきます。パートナー企業様にとってメリットのある策を講じていきます。
 
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