グループ経営が成り立たなければ、当社の存続もあり得ない──。NECグループのソフト開発の一翼を担うNECソフトは、この下期(2009年10月~10年3月期)から所属するNECグループのビジネスユニット全体での損益を最も重視する経営指標に位置づける。これまでのグループ会社単位での損益管理のやり方を改めるもので、ライバルの富士通や日立製作所も同様の手法を相次いで採用。メーカー系SIerの経営改革をリードするNECソフトの取り組みについて古道義成社長に聞いた。
営業は解散、グループへ移行
──下期からのNECグループ新体制で、NECソフトの営業専任部門がなくなりました。手足をもがれた状況になるのでは?
古道 勘違いをされておられるようですが、顧客との接点がなくなるわけではないのですよ。むしろこれまで以上に、顧客の経営課題の解決に向けて食い込んでいくための措置なのです。
──営業はNEC本体やNECネクサソリューションズに集約するのですよね。
古道 ええ、そうですが、NECソフトのSEとNECやNECネクサソリューションズの営業と一体となって活動します。当社は9月末まで百数十人規模の営業部門をもっていましたが、この組織は解散しました。人員はNECやNECネクサに出向や異動をしており、基本的には独自の営業活動は行いません。当社はソフトウェアの設計・開発に専念する会社になります。
──日立製作所が傘下の上場大手SIer3社を完全子会社化し、富士通もグループ上場SIer富士通ビジネスシステムを完全子会社にしました。NECソフトも4年前に似たような経験をしておられますね。
古道 当社は2000年に東証1部に上場しましたが、その後05年に完全子会社化により上場廃止になっています。
──そういう意味では、メーカー系の本体と傘下SIerの関係が大きく変わるなか、御社は他社より4年ほど先駆けていると。
古道 最初から計算していたわけではないですが、結果として大手メーカーが同じような舵取りをしたことを考えると、当社のほうが4年ほど進んでいると言えなくもないでしょう。上場廃止後はいろいろと苦労しましたので、他社もこれから2~3年はたいへんな時期だと思います。当社は先行している分、有利な経営戦略を打ち出せます。
──どの点に苦心されたのですか。
古道 社員のモチベーションです。上場会社とそうでないのとでは、やはり違いますし、今回の営業組織の統廃合も、あなたのように勘違いをされてしまうと、モチベーションの低下につながりかねません。私はNECソフト初めてのプロパー社長として今年6月に就任しましたが、社員のみなさんに正しく状況を理解してもらい、モチベーションを高めていく点に、最も神経を使いました。
──でも、NECやネクサが営業をして、NECソフトは設計・開発というように役割分担するとすれば、開発側は単なるコストセンターみたいになりませんか。
古道 もともと当社は、連結社員数およそ6500人で、その多くが設計・開発に携わっています。これまでは、自主ビジネスということで独自の営業体制をもってNECグループの連結業績の向上に貢献してきましたが、これからは設計・開発の本来得意とする分野に専念して、連結業績に貢献しようということです。“トヨタ方式”を採り入れたソフト開発の生産革新にも早くから取り組み、大きな成果をあげています。こうした点をライバル他社もよくみていて、今回のような傘下SIerの完全子会社化に踏み切られたのではないでしょうか。
当社はどちらかといえば、NEC本体と組むことが多いので、この流れで話しますが、下期からの体制では、基本的にNECが営業をし、受注した案件はNECがプロジェクトマネジメントを行います。当社はその下につきます。サブシステムや、当社がもともと得意とする業種・業態では、NECを通して、実質的に当社が責任をもってプロジェクトを遂行することも実際は少なくない。
当社は先行している分、有利な経営戦略を打ち出せる。
グループ会社個々が損益を追求すると、グローバルでの戦いに負けてしまう。
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