IPテレフォニー関連製品メーカーの日本アバイアは、事業領域の拡大を図る。トップシェアを獲得しているコンタクトセンター向けビジネスの地位を維持しつつ、市場の成長が見込めるUC(ユニファイドコミュニケーション)関連の製品・サービスの提供も重視。さらには、「BtoC」を視野に入れた取り組みも進める。2010年4月26日付で社長に就任したロバート・スチーブンソン氏に、同社の現状と今後の強化策を聞いた。
主軸事業の体制を整備、新分野への参入も
──社長就任から、早くも6か月が過ぎました。計画通りに進んでいますか。
スチーブンソン ええ。この半年ほどは、“新生アバイア”として生まれ変わるための総仕上げの期間でした。統合プラットフォーム「AURA」をベースに、コンタクトセンターやUCの分野で次々と新製品を発売しました。正直、ここまでスムーズに進捗するとは思っていなかったのですが(笑)、「波に乗っている」と感じています。個人的には、社長に就任して、社内の把握、取引先などへの挨拶回りなど慌しかった。でも、充実しています。入社前から「この会社にはポテンシャルがある」という印象があったので、今まさにそれを実感しているところです。
──スムーズな滑り出しということですが、社内体制についてはどのような強化策を打ちましたか。
スチーブンソン 現在、ビジネスの柱であるコンタクトセンター向け製品・サービスの分野では、次の成長に向けた体制を敷きました。具体的には、PBX(構内交換機)やSIPサーバーといったハードウェアを「何台売る」というのではなく、コンサルティングを含めてソリューションで提供できる人員を配置しています。当社のコンサルタントには、技術と経営、それぞれの立場からユーザー企業の声を吸い上げてコンサルティングできるメンバーが揃っています。コンタクトセンター向け関連製品の市場で、当社はトップシェアを確保しています。トップの地位は死守しなければならない。ですが、これまでのビジネススタイルでは大幅には伸びない。ソリューション提案がポイントになります。
また、新しくビジネスを拡大しようとしているのがUCで、この分野ではビデオ会議システムなど、ソリューション提案が基本です。しかも、競争が激しい。1社だけで完結するのは難しいとの判断で、アライアンスを模索しています。
それぞれの分野で、市場の動きとタイミング、新しいビジョンがあるかないかによって、社内外に向けた取り組みがまるっきり異なってきます。各分野のポジショニングを明確にすることで、社員のモチベーション向上につなげていくとともに、販売パートナーにとって売りやすい環境を作ることが重要と考えています。とくに、販売パートナーに対しては、ソリューションで提供できるようにするためのトレーニングを徹底的に実施しています。販売パートナーがユーザー企業の声に応えることができるような取り組みを追求しています。
──当面は、コンタクトセンターとUCを中心にビジネスを手がけていくのですか。
スチーブンソン この二つが当面は主軸です。また、近い将来には「BtoC」も視野に入れます。
──具体的には?
スチーブンソン 当社がコンシューマ向け製品を提供するというわけでなく、コンシューマに対してサービスを提供しているベンダーや事業者に対して、当社の技術や製品で何か支援できればと考えているのです。例えば、スマートフォンの普及に力を入れているNTTドコモなどの通信事業者に対して、当社の製品が“縁の下の力持ち”になる。それには、デベロッパーやSIerの力が必要です。とくに、アンドロイドをベースにビジネスを拡大したいデベロッパーやSIerとパートナーシップを組みたいと考えています。
実際、金融機関やサービス業などがコンシューマに対して映像や適したアプリケーションで付加価値サービスを提供しようとしています。それを補完するためのネットワーク関連製品・サービスの提供・構築にあたって、当社とデベロッパー、SIerなどが組んで、よりよい製品・サービスの具現化を模索しています。
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