日本と台湾のITベンダーが組んで中国に進出する、いわゆる日本×台湾×中国の新「ゴールデン・トライアングル」。その実現に取り組んでいる台湾の有力IT団体、中華民国情報産業協会(CISA)の劉瑞隆理事長は、日台中のビジネス連携の具現化を推進している。どうすれば、「ゴールデン・トライアングル」を具体的なかたちにできるのか。劉理事長に方向性をうかがった。
日本の高い品質を武器に
――CISAが描く新「ゴールデン・トライアングル」とは、日本のITベンダーの高い技術力や品質管理力と、台湾のITベンダーが得意とする中国でのビジネス経験を融合させて、一緒に中国市場を攻めるというものだと捉えています。その具現化に向けての進捗状況を聞かせてください。
劉 CISAは、今年6月に「日中ソフト交流商談会」を開催するなど、「ゴールデン・トライアングル」の形成を急ピッチで進めています。ここへきて、「台湾企業と連携したい」という日本のITベンダーから、ビジネス連携を実現したいという、確実な手応えを得ています。私が代表を務めるSIerのSYSCOMグループは、日立ソリューションズをはじめ、すでに数社の大手日本ベンダーの製品を販売しています。
日台アライアンスの具体例は、少しずつですが、確実に増えつつあります。CISAでの直近の活動を通じて、日本のITベンダーが「ゴールデン・トライアングル」に高い関心を抱いていると感じています。
――劉理事長は、かつて本紙のインタビューで、「日本はアジアのシリコンバレーになれ」と発言しておられます。
劉 日本の企業は実にすばらしい製品や技術をもっているので、それをグローバルに広く展開しようという意味を込めて、日本にシリコンバレーになってほしいと言いました。例えば、日本の家電製品は、世界で一番品質が高いといってもいいでしょう。日本製品は、今、全世界でニーズが高まっていると確信しています。そこで、日本にシリコンバレーのようにITの開発地になってもらって、台湾のITベンダーが橋渡し役を担うかたちで、日本から生まれたモノを、中国をはじめとしたアジア各地で販売する。そういうモデルをぜひ実現したいと考えているのです。
――IT分野で日台連携を実現するにあたって、現時点ではどのような壁に直面していますか。
劉 日本のITベンダーの多くは、何より品質を重要視します。でも、ちょっと細かすぎるという欠点があります。
――例えば、コップの下に少しでも傷がついていたら、最初からコップを作り直さないと気がすまない、ということですね。
劉 おっしゃる通りです。もちろん品質はとても重要ですが、コストの側面もあります。細かいところを重要視すれば、当然ながら開発・製造コストの負担が大きくなって、グローバルでの価格競争に負けてしまう。そうした高コスト体質の問題だけではなく、日台間のビジネスで、言葉や商慣習、価値観など、文化面の違いからも、さまざまな課題が発生しています。今後、こうした課題をクリアしなければ、日台連携を広い範囲で実現することは難しいとみています。
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