新生SCSKが本格的に立ち上がり始めた。目指すはトップSIerとなって世界の日系ユーザー企業をITの側面から支えていくことだ。旧住商情報システムと旧CSKが合併して発足した同社は、NTTデータに次ぐトップグループへと躍進した。クラウドサービスの基盤となるデータセンター(DC)設備も大幅に拡大。国内外でビジネスを展開する日系ユーザー企業のIT投資を一手に担うことでビジネスを伸ばす。
業界再編を占う重要なできごと
――いよいよ新生SCSKが本格的に動き始めたわけですが、まずは旧住商情報システムと旧CSKが、およそ2年をかけて慎重に経営統合の話し合いを続けてきた経緯を聞かせてください。
中井戸 無借金経営で社員数約3500人の会社が、1万1600人余りの会社と合併しようというのだから、慎重にならざる得ないところはありました。ただ、過去の情報サービス業における合併は、少々乱暴なところがあったように見受けられます。独禁法などの法律に触れないように十分注意を重ねながら、旧住商情報システムのトップとして旧CSKの経営陣と意見交換を重ね、財務の健全化を進めてもらうよう話し合いをした結果の2年ですから、決して期間が長すぎるとは思っていません。
――2011年10月1日の統合時点での有利子負債残高は599億円となり、社員も大幅に増えましたが、今後の成長路線に影響しませんか。
中井戸 影響はありませんね。リーマン・ショック以降の旧CSKグループの損失はもっと大きかったですし、旧CSKの最盛期の一人あたりの利益は、旧住商情報システムのそれと実は大きく変わらないのですよ。つまり、旧CSKにはそれだけ多く稼ぐ力量が備わっているということなのです。
あなたはおそらく旧CSKの実力をよくご存じないのではないですか。確かに旧住商情報システムは無借金の優良企業ではありました。しかし、例えば情報サービス業のビジネスモデルを大きく変えるまでの影響力を放っているクラウドコンピューティング事業については、正直、旧住商情報システムは旧CSKに遠く及びません。クラウドを支える最新鋭のDCについても、旧CSKは関西地区を中心に優良な設備を多数運営しています。旧住商情報システムも2011年8月に東京第3センターを開設したところですが、経営統合によって、関東と関西地区を中心にDCを計10拠点へと、大幅に拡大することができました。
――今回の経営統合は、情報サービス業に少なからぬ影響を与えそうです。NTTデータを除く、実質的な国内トップグループで通称“年商3000億円クラブ”への参画を果たし、これが業界再編の呼び水になるのではないかとの意見も聞かれます。
中井戸 日本の産業全体からみれば、情報サービス業の中堅企業同士が統合した程度のものかもしれません。しかし、情報サービス業のなかだけでみれば、これからの業界再編を占うような非常に重要なできごとだと自負しています。ITシステムは、企業経営にとって欠かせないものであることは、もはやいうまでもなく、この分野でトップグループの会社が一つ増えるという意義は大きい。ITを通じての産業全体の活性化に向けた第一歩を踏み出すことができたことに誇りをもっています。
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