中国本土、台湾、そして香港。NECグループで、この急成長地域のビジネスを任されているのが、木戸脇雅生総裁だ。41社の子会社・関連会社を束ね、今年度は前年度比30%以上の成長を掲げる。力を入れるのは「スマートシティ」だ。次世代都市の開発に必要な先進ITを提供することで、一気に存在感を示そうと目論む。NECに入社してから一貫して海外事業畑。アジア主要会社を立ち上げて、今のポジションに就いた木戸脇総裁の中国攻略戦略とはどのようなものか。北京で聞いた。
今年度は昨年度比30%増を計画
──NECが中国で初受注してから、40年が経つそうですね。
木戸脇 1972年は、日中国交正常化の年。その記念すべき年に、NECは移動式衛星ステーションを中国から受注しました。それが、中国事業の始まりです。
──今はどのような体制を敷いておられますか。
木戸脇 私が総裁を務めるNEC(中国)は、中国大陸と香港、台湾地域(編集部注:3地域を総称して中華圏)を統括しています。NEC(中国)の傘下に事業会社として、41社の子会社・関係会社を置いているというのが、大まかな中華圏の事業体制です。
事業セグメントとそれぞれの売上高占有率については、ITサービス事業が55%、プラットフォーム・ディスプレイ・プロジェクタ関連製品の販売事業が15%、キャリアネットワーク事業が20%、オフショア開発が10%。中華圏でのNECの事業は、ITサービスが中心です。ITサービス事業の昨年度(2012年3月期)売上高は、前年度比で50%増。順調に伸びています。
──NECの連結業績が伸び悩むなかで、成長国の中国を担当する木戸脇さんには、NECからかなりのプレッシャーをかけられているのでは?
木戸脇 今年度の中華圏全体の事業は、前年度比で30%以上伸ばすことが目標です。
──かなり挑戦的ですが、何で伸ばしますか。
木戸脇 徹底攻勢をかけるのは、スマートシティ。この分野に集中投資して事業拡大を図ります。
今、中国政府は、第12次5か年計画を進めており、そのなかの一つとして、中国全土で省エネ技術や新エネルギーを活用した次世代都市(スマートシティ)を建設することを盛り込んでいます。建設予定の都市は500~1000か所といわれ、各地域の政府関係者の成果は、スマートシティの進捗状況でみられると聞いています。そうなれば、沿岸部、内陸部問わずに急ピッチでスマートシティの建設が進むでしょう。
スマートシティは、基本的に政府のプロジェクトです。政府のIT投資案件は、中国の現地企業が受注するのが一般的。われわれのような外資系が獲得するのは極めて困難です。事実、NECの現在の中華圏ビジネスのなかで、政府関係の仕事はまだ小さい。ですが、スマートシティは新しい分野で、中国現地のITベンダーはまだその技術とノウハウをもっていません。外資系企業のNECでも、技術力やノウハウがあれば、十分に受け入れられるはず。政府からの仕事を獲得できる大チャンスが目の前にあるのです。
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