「リーマン・ショックで上場ができなくなってよかった。今はそう思う」。ブイキューブは、国内外で順調に業績を伸ばして、2013年12月に東京証券取引所マザーズへの上場にこぎ着けた。慶應義塾大学に在学中に同社を立ち上げた間下直晃社長は、2009年から2010年にかけて業績が悪化し、念願だった上場をいったん中断。その後、投資家の要請に縛られることなく、大胆に海外での事業体制を築き、コスト削減のツールとして注目されてきたウェブ会議の需要拡大を追い風にして、見事に事業を拡大した。現在は、活動拠点をシンガポールに移し、アジア展開に精を出している。3月、一時帰国中の間下社長にインタビューした。
米国の弱みを衝いて攻勢をかける
──間下社長は、2013年1月からシンガポールに在住しておられるとうかがっています。活動拠点を海外に移された理由を聞かせてください。 間下 シンガポールは、アジアのどこの国にも短時間で行くことができるハブです。当社は、シンガポールを市場として捉えるのではありません。事業拡大に力を入れている中国やマレーシアなど、アジア各国を回るためのベースとしてこの地を選びました。どうしても自らが現場を訪れて商談をしないといけないケースがあります。シンガポールから各国に出張し、足で稼ぐ活動に励んでいます。
アジアには、昔の日本のように、トップダウンで決断する文化が深く根づいています。ブイキューブの社長として私が現地企業や政府のキーパーソンと面談して、トップ層に動いてもらうことによって、案件が迅速に進むようになります。
当社が海外で主なターゲットに据えているのは、現地企業や国際企業など“非日系”のプレーヤーです。直近でも、数多くの案件が動いており、現地に足を運んで、各国の商慣習に配慮したビジネスの進め方をしてきたことが実を結んできたとみています。
──先日、韓国のToissと販売パートナー契約を締結されました。海外で事業展開する国を拡大しておられますね。 間下 アジア太平洋地域でウェブ会議が最も普及しているのは日本です。日本も、今後10年でマーケットが10倍になると予測されており、伸びしろが大きい。しかし、ウェブ会議がほとんど使われていないアジアの市場は、日本をはるかに上回る、ものすごい可能性をもっていると確信しています。
現在、アジア各国でウェブ会議の提案に注力しているのは、当社と米国のベンダーです。しかし、文化も宗教も慣習も、ウェブ会議の使い方も米国と異なるアジアでは、米国ベンダーは力を発揮しにくいでしょう。その点では、当社の立場のほうが有利だと判断しています。日本はいろいろな宗教に対して寛容ということもあって、イスラムなどの国に自分の価値観を押しつけようとしません。
当社は、「米国と宗教が異なる」とか「英語が話せる人が少ない」とか、米国のベンダーの弱みとなる要素が揃っている国をピックアップして、これらの国で重点的に提案活動に力を注いでいます。ちなみに、ウェブ会議のインドネシア語版を用意しているのは、当社だけだと自負しています。
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