兼松エレクトロニクス(KEL)の新社長、菊川泰宏氏は、「メーカーの単なる販売代理店ではない」という矜恃をもって、「KEL」としてのブランド力を大切にしながら事業の拡大に動こうとしている。「複数のメーカーときちんと手を握っていて、独自性を打ち出したインフラ案件を展開することができる」と自信満々だ。原点に立ち返って、ハードウェアを中心とするインフラの提供に集中することでビジネスを伸ばすというわけだ。営業出身で「売る観点」に立つ菊川社長に、事業の方針についてたずねた。
「売る観点」を磨いて会社をリード
──菊川社長は、2007年に執行役員に就任されて以降、企業経営に携わってこられました。このたび社長に就かれて、何かが変わったと実感されるようなことはありましたか。 菊川 当然の話ですが、社長にはアシスタントがつくので、自分でスケジュールを組まなくてもよくなった……というくらいですかね(笑)。前社長の榎本(秀貴)がおよそ8年の間、当社のトップを務めていたので、経営陣は「そろそろ社長が交代してもいい」と判断したのだと思います。
──そして、新しい社長に菊川さんが抜擢されました。自慢話でも結構ですので、その経緯などについてお聞かせください。 菊川 私は、立教大学を卒業した後、日本通信工業(現NECインフロンティア)に入社して、経理の仕事やプログラミングに携わりました。1987年、当社に転職し、経営陣に入る前に、営業畑を歩んできました。これまでのキャリアで多様な仕事を担当させてもらい、いろいろな経験を積んできた実績が評価されて、今回、社長になれたのかな、と捉えています。クラウドの登場によって、IT企業を取り巻く環境が激変し、社長として、常に変化に対応する経営判断を下さなければなりません。そういう時代の要請も私が社長に推薦されたことの背景にあるのではないかとも思います。
さて、自慢話ではないのですが、一つ、エピソードを語らせていただきたい。
私は1995年頃、営業担当だったときに、バックアップソフトウェア「NetBackup」を日本で初めて販売するプロジェクトを率いました。当時は、バックアップはまだほとんど普及していなかったのですが、私はバックアップの可能性を強く感じて、いち早く事業化につなげるよう、プロジェクトを立ち上げて、成功に導きました。この経験を通じて、とても大切だと思うようになったことは、商材が売りやすいかどうかという「売る観点」をもつことです。社長になった現在も、売りやすさの判断力を発揮して、ビジネスの成長に結びつけたいと考えています。
──御社は、2014年3月期の業績が好調で、売上高は前期比41.8%増、営業利益は同じく13.5%増の実績でした。このところのビジネスの状況について、どうみておられますか。 菊川 好調のけん引役は、インフラ構築や仮想化の案件です。最近、お客様の本社移転やオフィスの増設が活発になっていて、とくにネットワーク系などの「引っ越しビジネス」が伸びています。お客様は、事業拡大に直結する「攻めのIT投資」に取り組んでおられるので、インフラは今後も需要が旺盛とみています。こうしたなか、当社は原点に戻って、お客様に密着するかたちで、ハードウェアを中心とするインフラの案件に注力したい。
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