富士ゼロックスは、コピー機/プリンタ、複合機の開発・調達・生産・販売を手がけるグループ会社を中国におよそ10社保有しており、総人員数は約1万4000人に上る。徐正剛氏は、販売会社の富士ゼロックス(中国)の董事長を務めるかたわら、本社の中国事業総代表として、中国のすべての会社を統括。中国の事務機市場で勝ち残るために、従来の生産・販売体制を刷新し、「中国で頭一つ抜けたトップベンダーになる」と意気込んでいる。
バリュー&ボリュームの二大戦略
──中国の事務機ビジネスついて、現在の市況感を教えてください。 徐 2010~12年頃と比較すると、現在の市場の成長は鈍化してきています。当時の中国は、経済成長率が10%ほどあり、富士ゼロックス(中国)の売上高も毎年20%増のペースで成長していました。しかし、一昨年あたりから中国経済が減速し、当社の成長率は10%近い数字で伸びているとはいえ、減速傾向にあります。
今は、もう以前のような年率20%の成長は目指していません。無理をして経営の品質を落とすことはよくないので、持続可能な安定成長に向けて舵を切っているところです。確実に10%成長するための政策を進めています。
──どのような政策を進めておられるのですか。 徐 大きく二つの戦略を設けていまして、一つは“バリュー戦略”、すなわちお客様に価値を提供する戦略です。もう一つは“ボリューム戦略”、つまり数をさばくという戦略です。この両輪をうまく回していこうとしています。
“バリュー戦略”は、当社の中国国内28拠点にいる約1000人の直販部隊が主に担当しています。スキルがある直販のセールス担当が、当社の強みであるハイエンド複合機にソリューションやサービスを組み合わせて価値を提供します。
ただし、中国は広いですから、直販だけでは市場をカバーしきれません。代理店さんとタッグを組む必要があります。代理店さんが価値創造をすることは簡単ではありませんので、ローエンド複合機で量をこなしてもらおうというわけです。これが“ボリューム戦略”です。
当社のビジネスでは、利益は圧倒的に直販が大きく、全体の8割を捻出しています。ただし、販売台数では、直販は全体の2割にとどまっています。逆に、代理店は販売台数の8割を占めていますが、利益は全体の2割しか稼いでいません。つまり、この両輪があって初めて、安定成長ができるのです。
──中国市場での富士ゼロックスのマーケットシェアはどのくらいでしょうか。 徐 ハイエンド市場では中国でもトップベンダーです。ただ、ここ3~4年は“ボリューム”であるローエンド市場の強化に力を入れています。その成果として、08年に5%程度だったA3複合機の台数シェアは、私たちの調べによると13年に15%まで伸びています。これができたのは、お客様のニーズに合う製品をつくるために、開発や販売のやり方を変えてきたからです。例えば、2年前に提供を開始した小規模向けA3モノクロ複合機「DocuCentre S2010/S1810」は、発売から一年半で十数万台の大ヒット商品となりましたが、これは“中国仕様”でつくった製品なんですよ。
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