コピー機/プリンタを中心とする中国の事務機市場では、いまだにモノクロ機が全体の9割方を占めているといわれる。しかし、この先数年で市場は様相を変えそうだ。富士ゼロックス(中国)とキヤノン(中国)は、カラー機と事務機向けソリューションの市場が急成長すると判断し、同市場の同時開拓を中核戦略に据えている。

富士ゼロックス(中国)
徐正剛
董事長 富士ゼロックス(中国) は、5月28日、個人事業主(SOHO)と中小規模事業所(SMB)をターゲットとしたA3カラー複合機「DocuCentre SC2020」を発売した。徐正剛董事長は、「ボリュームとバリューを両輪として、両方を同時に提供する」と明言し、最新機種は“ボリューム”、すなわち販売数を拡大させる中核製品と位置づけている。ハイエンド複合機では、中国でトップシェアを握る富士ゼロックス(中国)だが、ここ数年はローエンド市場の開拓に力を入れている。今回、ローエンド向けカラーの領域で市場を先導すべく、開発・調達・生産・販売までのライフサイクルを中国国内で一体化して、現地ユーザーのニーズに適合する「DocuCentre SC2020」を生み出した。価格も従来のローエンドモデルより安い17万円台に設定し、より幅広い層が導入できるようにしている。新製品は代理店販売を基本としており、大規模な販売数が見込める約200社の一次代理店を通じて提供。徐董事長は、「今年中にA3複合機のシェアを18%まで伸ばし、中国国内で頭一つ抜けたベンダーになる」と目標を掲げる。
一方、“バリュー”については、国内28拠点に配置している約1000人の直販営業担当者が主に受け持つ。認証セキュリティやドキュメント管理、MPSなどをハイエンド層を中心に提供していき、「今後3~4年で、直販の売り上げの3分の1から半分をソリューションビジネスにする」(徐董事長)。

キヤノン(中国)
渡辺秀一
高級副総裁 キヤノン(中国)も、「カラーとソリューションのデュアル・エンジンを成長の起爆剤と位置づけている」(渡辺秀一高級副総裁)。同社は、モノクロ機では中国でトップシェアを誇り、事務機の販売数の約7割は、小規模向けのモノクロ20枚機となっているが、「現在は、政府関連を含めた大手・中堅企業の顧客を拡大すべく、中・高機種やカラー機、ソリューションの提案を強化している」(渡辺高級副総裁)。販売台数に占めるカラー機の割合は、まだ10%程度だが、「カラーコピー機は、2013年に前年比で70%ほど販売数が増えており、レーザープリンタ(LBP)でも20%ほど増加している」と好感触を得ているようだ。
キヤノン(中国)の事務機販売の9割は代理店が賄っており、コピー機でおよそ300、LBPで約400の一次代理店を有している。カラーとソリューションを拡販するためには、顧客への提案力の強化が不可欠と捉え、13年7月には、代理店向けに売り方を伝授する「キヤノンアカデミー」を開校した。さらに、月に1回、カラーとソリューションを重点的に提案する強化日を設け、本社の直販営業部門が代理店と一緒に顧客提案を行うなどして、顧客ニーズを吸い上げるための接点を強化している。渡辺高級副総裁は、「デュアルエンジンによって、今年は事務機ビジネスの売上を前年比で15%増やしたい」との意欲を示す。
両社が、カラーとソリューションの同時開拓に熱心なのは、中国独特の市場環境を踏まえてのことだ。日本では、モノクロからカラー、そしてソリューションへと順にユーザーのニーズが変遷していったが、渡辺高級副総裁は、「中国では、カラーとソリューションの需要が同時に拡大する」と予測しており、徐董事長も、「日本で10年かかったことが、中国では2~3年で進む。もたもたしていると乗り遅れてしまう」とみている。携帯電話を飛び越してのスマートフォンの普及など、中国では、ある時期に市場が急成長する傾向がある。事務機市場も、まさにそれに当てはまるというわけだ。(上海支局 真鍋武)