米EMCは「脱・ストレージメーカー」を目指し、ストレージ管理のソフトウェアやデータ解析ツールなどを揃え、ポートフォリオの拡充に取り組んでいる。日本法人のEMCジャパンを率いる山野修社長は、販売パートナーをどう巻き込んで、本社の方針を実行しようとしているのか。掲げているのは、「データレイク」──湖のようにデータを溜めて、フィルタをかけることなく、分析するという仕組みをパートナーやユーザー企業に提案することだ。EMCジャパンのトップに就任して4年弱。山野社長の「今」に迫る。
「水平統合」を貫き、販社に選択肢を与える
──山野社長は、2011年1月にEMCジャパンのトップに就任されました。当時、40%だったパートナー販売の売上比率を、この3年半で80%に引き上げたとうかがっています。 山野 もともと当社とつき合いがあった大手の金融機関や通信キャリア向けには、今も直接販売していますが、それ以外のお客様に対しては、パートナー経由で製品を提供するケースがほとんどです。当社は従来、ハイエンド向け製品を中心に開発・販売してきたのですが、ここ数年、準大手や中堅企業に適したミッドレンジ製品を投入し、ポートフォリオを拡充しました。その戦略が功を奏し、ここにきて、準大手・中堅向けの案件が活発に動くようになっています。
実は、準大手・中堅向け案件のおよそ半分が、パートナーからの紹介です。このことから、当社に寄せるパートナーの満足度が高いことを実感しています。昨年から、パートナーの提案活動を支援する電話営業、いわゆるインサイドセールスを行っていて、こちらも確実に成果が出ていると捉えています。準大手・中堅向けビジネスはまだまだ伸びるとみているので、引き続きパートナーとの関係づくりに力を入れていきます。
──米EMCは、企業の買収によって、ストレージの管理ソフトウェアやデータ分析ツールなどを入手し、ハードウェアメーカーからの脱却を加速しています。一方、中国のメーカーを含めて、ストレージ市場の新規プレーヤーも増えつつあります。そんな状況にあって、EMCジャパンとしての強みをどう捉えておられますか。 山野 昨年、ビッグデータ活用を実現するためのアジャイル開発ツールを手がけるPivotalを設立し、日本でも同社ツールの販売を促すためにデータサイエンティストを採用するなど、ビジネス体制の構築に注力しています。当社の戦略のポイントは「水平統合」。つまり、Pivotalなどの製品に、EMC以外のストレージや仮想化ツールを付け加えて提案することを可能にし、システムの製品構成に関して、販売会社に選択肢を提供しているというわけです。この点は、「垂直統合」を掲げ、すべてを自社製品で網羅しようとしている他のメーカーとの明確な違いです。
おっしゃる通り、中国メーカーはこのところ、ストレージ市場の開拓に取り組んでいます。当社は、ソフトウェアの豊富な製品群を揃えていることと、大企業にも認められている高品質な製品が強みになると判断しています。この二点を前面に打ち出して、中国メーカーとの差異点を強調したい。
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