ベテランならではの落ち着きのある応対だが、商談の場ではEMC製品のよさを熱く語る。開発畑出身の長谷川和也さんは、2000年、技術力に可能性を感じたEMCジャパンに入社した。それ以来、外資系の営業マンとしては珍しく、勤続15年。「これ以上、やり甲斐がある仕事はない」。そう断言する長谷川さんは、現在、新商材として力を入れているフラッシュ製品を売ってもらう販売パートナーの経営陣に接し、部下の提案活動を裏で支えている。「何でもスムーズにこなす」と評判の長谷川さんの活動を追った。
長谷川和也(はせがわ かずや)
1988年、明電舎に入社し、コンピュータ周辺機器の研究開発に携わる。95年、ネクストコム(現三井情報)に転職し、ネットワーク製品の営業を担当。2000年、EMCジャパンに入り、直販営業を経て、現在は販売パートナーへの提案活動に従事。11年、部長に就任した。7人の部下をもつ。
人脈をフルに生かして部下の営業を裏で支える
ビッグデータの時代に突入したことで、システムの設計段階で3~5年先にどのくらいの情報量を処理しなければならないかがみえなくなっているユーザー企業は、今、増加するデータの処理に柔軟に対応できるスケールアウトというシステムの拡張方法に高い関心をもっている。当社は、昨年、このスケールアウト・アーキテクチャを搭載し、他社製品の2倍以上の性能を発揮するフラッシュ製品群「EMC Xtrem」を市場に投入した。この製品群を販売パートナーに提案し、積極的に売っていただくのが、私が率いるチームのミッションだ。
私は入社してから15年の間、社内人脈はもちろん、販売パートナーの経営層の方々とも太いパイプを築いてきた。これを生かして、最前線で提案活動に励む部下を裏で支えている。パートナーへの営業のポイントは、先方の経営陣と交渉し、採用の決断を促すこと。部下に同行して現場に出ることもあるが、それぞれの活動領域を分けたほうが効率がいいので、同行はなるべく控えるようにして、部下が現場への提案を進める間、私はパートナーの経営陣を訪ね、後方で交渉する。
パートナーが製品の取り扱いを開始するにあたって気にかけるのは、先行投資に対してどのくらいお金が入ってくるかということ。パートナーの経営陣に対しては、例えば、「今ならまだ扱っている企業が少ないので、利益を出しやすい」「パートナープログラムの予算で先行投資を支援する」というように、製品を取り扱う利点を訴えて、部下の営業活動を支援している。
商談だけでなく、社内でもEMC製品のすぐれている点を語り続けている。そうすることによって、部下は「いい会社で働いている」と感じて、提案活動に自信をつける。部下からは、毎週メールで直近の「ハイライト(成功)」「ローライト(失敗)」とトピックスを簡潔にまとめた報告を受ける。これで現場の動きを把握して、それらの情報を私が山野(修)社長に提出するレポートの材料に使う。
外資系メーカーでは、グローバルで統一した方針の下で事業を展開しながら、日本市場の特性に応じたローカライズを図ることが非常に重要。現場の声の吸い上げと、社内での議論は欠かせない。私の出番は、こうした社内での交渉にもある。例えば、部下が提案で社内のセクションの壁に直面したとき、誰に聞けば解決するかを考え、実際に交渉し、壁がなくなるように動く。心の底からEMC製品が好きな私と同じように、部下にもモチベーションを高くもってもらい、営業活動に励んでほしい。だから、もっている人脈はフルに活用する。
プライベートでは、20年前から年1回、家族とともに海外旅行を楽しんでいる。「リラックス」「自然体感」「古代文明」など、毎回テーマを決め、各国に旅してエネルギーを補充する。仕事も趣味も一貫性を保ちながら、今後もばりばり活動したい。
私の営業方針を表す漢字は……「創」
存在しないものをかたちにするという意味の「創」は、二つの理由から選んだ。一つには、当社は新しい技術をいち早く製品化するメーカーなので、市場をつくり上げる必要があるということ。二つ目は、自分から仕事をつくらなければならないということだ。当社は従業員の数を必要最小限に抑え、少人数であらゆる仕事をこなしている。能動的に動き、案件をものにしたり、新しい市場を開拓したりしないと、会社が求めている結果を出すことはできない。私はこの企業文化が好きだ。