「これまでのSAPには、どうしても『製品の価格が高い』『インプリメンテーションに時間がかかる』『複雑』というイメージがあった。これを変えて、SAPが提供する価値を本当に簡単に享受できることを伝えていく」。独SAPでラピッド・デプロイメント・ソリューションズ(RDS)&カスタマー・オペレーションを担当するスティーブン・バードサル シニアバイスプレジデントはこう話す。

独SAPのスティーブン・バードサル シニアバイスプレジデント

 SAPジャパンは、2011年5月、3ヵ月以内という短期間で、安価にSAPソリューションを新規導入または追加導入できる「SAP Rapid Deployment Solutions(RDS)」の提供を開始した。第一弾として投入したのが、CRM(顧客関係管理システム)「SAP Customer Relationship Management」の「RDS」ソリューション、「SAP CRM Rapid-Deployment Solution」だ。7月30日に、5種類の新製品を発表した。

 「RDS」は、パラメータをあらかじめ設定することで、安価な固定価格で3か月以内にSAPソリューションを導入できるパッケージ。ソフトウェアライセンスや導入・教育サービスを含めて、価格は1000万円前後からに設定している。パッケージは、(1)ソフトウェア、(2)SAPのベストプラクティスやテンプレート、ツールを盛り込んだコンテンツ、(3)ガイドと教材による活用支援、(4)固定の機能範囲と価格――で構成する。機能を限定したことで初期導入コストを抑えながら、「SAP ERP」との接続を含め、必要とする機能だけを導入後に拡張できる。

 SAPは、これまで「SAP Business All-in-One fast-start program」という中堅企業向けERP(統合基幹業務システム)の短期間・低コスト導入プログラムを用意していたが、バードサル シニアバイスプレジデントによると「『fast-start program』をアップグレードして『RDS』に置き換えた」という。

 両者の違いは、「fast-start program」がSAPのベストプラクティスだけで構成していたのに対して、「RDS」は導入・教育サービスが充実していること。加えて、中小企業から大手企業までの幅広い企業規模層を対象とする100以上のソリューションを揃えていることにある。

 バードサル シニアバイスプレジデントは、「『fast-start program』のパートナー企業には、販売活動を継続してもらうために『RDS』の認定資格を取ってもらう。VAR(付加価値再販業者)やSIer、OEMパートナーが『RDS』のことを学んで販売できるようにしたい」と語る。

 拡販への懸念を挙げるとすれば、「fast-start program」との違いについて、顧客に十分にメッセージが伝わっているのかという点だ。バードサル シニアバイスプレジデントは、「今回の私の来日目的の一つは、日本で『RDS』を推進する組織を立ち上げること。ウェブサイト各種コンテンツの翻訳、パッケージのローカライズを進める。顧客には、すぐに違いを理解してもらえるようになるだろう」と自信をみせた。

 気にかかるのは顧客の理解だけではない。そもそも、「fast-start program」のような考え方は日本で受け入れられてきたのか。SAPジャパンの細川卓也ソリューション営業統括本部RDSディレクターは、「『fast-start program』の導入実績は数十社。金額を最初に提示するのは顧客から好評だったが、ベストプラクティスベースに対して日本の企業は他国よりも少し抵抗感があった」と明かす。

 しかし細川ディレクターは、「そうした状況も変わりつつある」として、「業務部門システムに関して、製造業の場合は業務にパッケージを合わせるカスタマイズを前提にすることが多かったが、最近はシステムを固定化するリスクは避けたいという顧客が増えている」と説明する。「RDS」を歓迎する顧客層が拡大しているというわけだ。

 グローバルでは、クラウドに対する関心も高まっているという。CRMを含む「RDS」は、クラウドサービス「Amazon Web Services」上で提供できる。バードサル シニアバイスプレジデントは、「顧客がクラウドベースのシステムの有用性に気づいた。『RDS』なら、ハードウェアとソフトウェアをあらかじめ設定した段階で、パブリッククラウドやプライベートクラウド、オンプレミスの環境で、すばやくシステムを利用できる」とアピールする。(信澤健太)