【シンガポール発】日本の国産ソフトウェアベンダーが集まるメイド・イン・ジャパン・ソフトウェア・コンソーシアム(MIJS、理事長:美濃和男エイジア社長)の海外展開委員会(委員長:内山雄輝WEIC社長)は、6月18日から4日間、アジア進出の足がかりをつくることを目的に「MIJS ASEAN市場視察ツアー」を行った。ツアーには、加盟ベンダー17社から25人が参加。初日の18日は、喜劇王のチャーリー・チャップリンが愛したシンガポールの中心部にあるラッフルズ・ホテルで、ビジネスブレイン太田昭和(BBS)と日立システムズがセミナーを共催。BBSのアドバイザーや両社担当者が、シンガポールのIT市場の現状や日系企業を中心に展開しているサービスなどをMIJS参加者や現地日系企業に紹介した。

BBSのアドバイザーである安間裕氏は、販管費が増大する海外進出企業の課題を炙り出した

 冒頭に登場したのは、元アクセンチュア執行役員兼BPO統括本部長で、現在BBSのアドバイザーを務める安間裕氏。日系中堅・大手企業は海外に市場を求める必要性を説き、同時に海外拠点向けのBPOの重要性を語った。

 安間氏によれば、日本国内では利益を出しにくく、多くの企業が海外で利益を稼いでいるが、それでも「海外に進出する日系企業の営業利益率は、先進国で唯一10%を下回る9.8%。その営業利益のほとんどが海外で稼いでいる状態で、海外進出は必然だ。多くの企業が成長著しい東南アジアを目指している」と、利益の源泉は日本にはないとした。また、日系企業の多くは国内の販管費が過大で、欧米やアジアの企業に比べてITで販管費を減らす努力をしていないと指摘した。

 一方で、日系企業は総務・経理・人事を外出しして労務コストの安いアジアで賄い、BPOなどの方法で販管費の削減を狙っている。安間氏は、「欧米では主要業務のアウトソーシングはあたりまえ」と述べ、バックオフィス業務に限らず、販管費以外の経費も含めてBPOを活用し、コストを削減しなければ、日系企業は世界で生き残れないとした。

 また、アジアの拠点で、日本の経理業務を任せられる人材を現地で調達するとなると、賃金の高い層を採用しないと回らないと指摘。現地のスキルの低い人材でも、日系企業の厳密な会計業務に適合するITやBPOを使うことが重要になっているようだ。安間氏は、「会計などの業務をシンプルにするために業務テンプレートを活用し、複雑な業務を得意としない層でも使えるようにすべきだ」と語り、「BPOを活用すれば、離職率の高い東南アジアの事情に対応して業務を均一化できる」と対策を示した。

BBSの大和淑晃事業部長は、BPOがバックオフィス以外に拡大している事情を語った

 続いて、BBSのBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスについて、グローバルシェアードサービス事業部の大和淑晃部長が登壇。「BPOは、直接材の調達に関わる分析や価格交渉の部門、日本の最高裁の土地競売手続きなどでも利用され、シンガポールに至っては、政府が教育コンテンツ制作でBPOを用いている」と、欧米・アジアで汎用業務以外のBPOが定着しつつあると説明した。

 安間氏が述べた通り、東南アジアの人件費は急騰しており、海外拠点の会計をはじめとする重要業務の人材を採用するには「インドネシアでいえば、新卒レベルの人材は最低でも必要になる」となる。大和部長は、現地の事情をよく知る必要性を説き、そのうえでBBSのBPOサービスに触れた。

 BBSのBPOサービスは、国内は東京と浜松、アジアの重要拠点にサポート拠点を置き、バックヤードでは公認会計士など専門家を配置。業務改善のBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)と日立製作所グループで提供するITを加え、海外拠点を構える際に解決すべき規制に対処し、トータルでBPO導入・活用を支援する。「グローバル進出の成功の鍵は、BPOの活用にある」と大和部長は強調した。

日立アジアの藤本勝則・GM代理は、現地のローカル会計ソフトだと「会計処理がブラックボックス化する」と注意を喚起

 また、日立システムズの産業・流通サービス事業部からは、日立アジアの藤本勝則・GM代理が、アジアで展開する多言語型会計クラウドサービスを紹介。藤本GM代理は「日系企業の多くは、アジアの拠点で日本の家電量販店で販売しているような安価な現地ローカルソフトウェアを使っている。しかし、日本語対応はおろか、多言語対応でさえなく、会計処理の途中で不正があっても日本の本社は見抜くことができない」と説明。例えば、シンガポールで売れている会計ソフト「MYBO」を使うと、「会計などがブラックボックス化する」と注意を喚起した。

 そのうえで、スーパーストリームの海外対応ERP(統合基幹業務システム)「SuperStream-NX」とBBSのBPOを組み合わせたソリューション・サービスの利用を促した。「SAPやオラクルのERPは数億円と高額で、海外拠点に導入するにはハードルが高い。また、ローカルの会計ソフトには問題が多い。ウェブ対応できていなければ、リアルタイムに日本本社で状況を把握できない」(藤本GM代理)と、クラウドと多言語対応した「SuperStream-NX」と、BBSの記帳代行業務のBPOで、「さまざまな海外拠点の課題を解決する」と述べた。

スーパーストリームの山田誠部長は、デモを交えて「海外拠点を含めた管理会計を行うにはERPが最適」と伝えた

 これを受けて、最後はスーパーストリームの山田誠マーケティング企画部長が、通信環境が脆弱な環境下でもインターネット・エクスプローラ(IE)ベースでストレスなく「SuperStream-NX」を扱えることをデモで見せた。「『SuperStream-NX』の既存顧客は4分の1が海外拠点を設けている。現地の安価な会計ソフトでは、日系企業が必要とするセグメント別の管理会計やグローバル会計ができない」と説明。中国で政府公認の会計ソフトを開発・販売する用友と金蝶に「SuperStream-NX」は対応し、中国政府が示す勘定科目に応じて中国現地で会計処理・報告ができ、日本本社では日本の会計で財務状況を把握できるようにしたことを報告した。

 MIJSからは、美濃理事長が挨拶に立ち、MIJSの設立の狙いや加盟ITベンダー、目指す方向を語った。MIJS一行は、19日にはシンガポールのMホテルで「MIJS Round Table in Singapore」を開き、現地ITベンダーなどと交流する。