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ソニー、FeliCaカードを利用した「電子お薬手帳」サービス、今秋に川崎市で試験サービスを開始

2013/08/20 18:34

 ソニー(平井一夫社長兼CEO)は、個人情報に配慮したデータをクラウド上に蓄積するシステムを開発した。最初のアプリケーションとして、非接触ICカード技術FeliCaカードを利用した「電子お薬手帳」の試験サービスを、今年秋に神奈川県川崎市で開始する。

「電子お薬手帳」の利用者向けスマートフォン画面

 利用者の個人情報とデータを分離し、データのみをクラウド上のサーバーに保存するシステム。個人情報はクラウドに送信せず、利用者のカード内に記録し、これらの情報を結びつけるための共通のIDを割り当てる。クラウドにデータを保存しないので、クラウドサーバーへの不正アクセスがあった場合でも、個人情報とは結びつかない。

 「電子お薬手帳」は、FeliCaチップを埋め込んだカードを薬局の端末にかざすだけで、調剤履歴の閲覧と調剤情報を記録するサービス。調剤情報や副作用などの薬歴データは、氏名や生年月日などの個人情報を含まないかたちでクラウドに蓄積。情報提供に同意した利用者のデータを、個人情報を含まない統計データとして自治体や製薬会社に提供し、インフルエンザなどの感染症流行情報の発信や、服薬で生じる可能性のある有害事象の早期発見を支援する。

 利用者は、スマートフォンに専用アプリをインストールして情報を閲覧する。診察を受けた際の症状や服薬後の副作用、アレルギーなどの記録にも対応する。薬局は、専用のソフトウェアをインストールしたPCやタブレット端末、カードリーダーなどでシステムを構築。調剤履歴だけでなく、利用者がスマートフォンで入力した症状、副作用、アレルギーなどに関する情報を見て、薬剤師は利用者の状況を効率よく的確に把握することができ、リスクコミュニケーションの促進にもつながる。

薬剤師向けタブレット端末画面

 さらに、スマートフォンで保護者が子どもの調剤情報を管理したり、離れて暮らす高齢者の状況を家族や親戚が見守ったりすることで、家族間のコミュニケーションを深めることができ、「セルフメディケーション」の促進に役立つ。

 ソニーは、サービスの実証実験として、川崎市宮前区医師会、川崎市薬剤師会と協力し、東京大学大学院薬学系研究科の五十嵐中特任助教監修の下、2011年11月から川崎市宮前区にある約20の薬局にシステムを提供。各薬局がこのシステムを用いたサービスを提供し、現在までに約1000名が実際に利用している。

 2013年秋からは、実証実験を通して利用者や薬局から得た要望や、蓄積した知見を生かして対象エリアを川崎市全域に拡大し、試験サービスを展開する。
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