日立製作所とディスプレイ大手の乃村工藝社は、ビッグデータやM2M(マシン・トゥ・マシン)を駆使して、商業施設などの店頭ディスプレイのデジタル化を推進する。日立製作所が得意とするビッグデータの解析結果を店頭に設置したディスプレイに反映させることで、「顧客にとって最適な顧客体験や、接客・提案を容易にする」(日立製作所サービスプロデュース統括本部の安田誠副統括本部長)ものだ。

 人の動きを感知する人感センサやモーションキャプチャ、顔認識エンジンが収集するデータを分析し、人の流れやおおよその年齢、性別、商品棚前での購買行動を記録する。こうした分析結果を乃村工藝社が最適なかたちでディスプレイに反映することで、「これまでのアナログディスプレイでは実現が難しかった顧客ごとに最適化したディスプレイを実現する」(乃村工藝社の中村久企画開発部長)考えだ。

 ここでいう「ディスプレイ」とは、店頭POPのように単純に液晶モニタに情報を映し出すものではなく、たとえばAR(拡張現実)による表現や、スマートフォン用アプリとの連動など、顧客に情報を伝える手段全般を指す。

 また、監視カメラなどで個人が判別できる映像を記録するのでなく、あくまでも人の動きを数値化するセンサを使うことで、プライバシーの保護に努める。「映像は残さず、個人特定が不可能な数値だけを分析する」(日立の安田副統括本部長)と、個人情報をもたないことも重要なポイントだという。

日立製作所サービスプロデュース統括本部の安田誠副統括本部長(左)と乃村工藝社の中村久企画開発部長

 現在、リアル店舗は、Amazonをはじめとするネット通販と激しい顧客争奪戦を繰り広げており、店頭で商品を確認して、購入はネット通販で行う「ショールーミング」の阻止、ネットから店頭へ顧客を誘導するO2O(オンライン・トゥ・オフライン)やオムニチャネルの推進など、さまざまな手を打っている。しかし、実際に店頭に足を運んだ顧客体験の向上や、ITを駆使した接客・提案が十分にできなければ、これらの施策は万全とはいえない。

 日立製作所と乃村工藝社は、お互いの強みをもち寄ることで、ビッグデータ解析やM2Mと店頭ディスプレイのデジタル化を推進。日立の安田副統括本部長によれば、「流通サービス業を中心とする顧客からの引き合いは好調」ということで、すでに20件ほどの引き合いが来ているという。また、乃村工藝社の中村企画開発部長は、「国内ディスプレイ市場の規模は約1兆2000億円だが、ディスプレイのデジタル化によって、新たにその10%程度に相当する1200億円の市場拡大効果が期待できる」と、手応えを感じている。(安藤章司)