NPO法人の山梨ICT&コンタクト支援センター(山梨県甲斐市)は、7月25日、地域活性化について考える山梨ICT地産地消フォーラム(日本コンピュータシステム販売店協会など後援、BCNなど協賛)を、北杜市の星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳で開催した。

会場となった星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳

 山梨ICT地産地消フォーラムは、2012年に第1回を開催。3回目となる今年は、急増する要介護者や障がい者を抱える高齢者に対し、質の高いICT(情報通信技術)を活用したケアサービスの提供に加え、地域の食・農を利用した高齢者向けの食事の開発などをテーマに、地元の有識者らが日頃の取り組みを発表した。地元を中心に、新事業の展開を検討している人や、街づくりに取り組むITベンダー、介護・農業などの関係者や学生、首都圏のITベンダーら約100人が集まった。

 フォーラムのテーマは「超高齢化社会におけるICT活用のケアサービスと食・農を通じた地域活性化」。冒頭、挨拶に立った梨北農業協同組合の堀川千秋・代表理事組合長は「『過剰広告山梨』と県内ではよくいわれるが、果物を中心にすべての農作物を育てているなかで宣伝を多くしている。常々、次世代の子どもの食を重要視した取り組みが必要と思っている。安全を確保するには、自らの手で安心・安全な作物を育てたい。また、農協として長期療養型の介護施設の運営に取り組んでいる」と、次世代の食・農や高齢者福祉の活動を紹介した。

梨北農協の堀川組合長は「次世代の子どもに安心な食物が必要」と挨拶

 続いて登壇した経済産業省関東経済産業局の佐藤成徳・地域経済部地域経済課長は、超高齢化社会の下での新たな地域づくりについて、行政機関の立場で2020年の東京五輪をきっかけにした地域活性化戦略プランを披露。このなかで佐藤課長は、東京鮴に向けた五つの「強み」を挙げ、魅力づくりに関する戦略を策定していることを示した。

 五つの強みとは、「超高齢先進国」「街づくり」「アニメ・ポップカルチャー」「伝統食」「ものづくり」。超高齢化社会に向けては、「在宅医療や介護の普及、遠隔診断、在宅ホスピタルが必要」(佐藤課長)と述べ、最初のステップで在宅医療を提供したうえで、医療・介護の包括的な支援体制を構築し、高齢者の健康、生活への支援モデルを検討していくとした。このなかで、訪問医療・診療の効率化などの領域でICTを積極的に活用していく。この体制づくりの一環として、土地代の安い地域の利用を挙げた。

 アニメ関連については、「2010年のNHK大河ドラマ『龍馬伝』では、高知県で409億円の経済・広告効果があった。また、熊本県のくまモンなど、多くの地域で実績を上げた」(佐藤課長)と、コンテンツを利用した観光などの集客と地元消費によって、地域活性化を促すことができるとして、「訪日観光客を呼び込む施策などを実施する」と語った。

 ものづくりでは、観光誘致の一環として「ものづくり現場ツアー」を設けたり、創業支援策などを推進したりするほか、伝統食についても、海外で人気が高まっている日本食のプロモーションを強化していくことなどを示した。またこれらを含む、関東経済産業局の「地域活性化の戦略プラン」を説明し、地域での取り組みを促した。

関東経産局の佐藤課長は具体的な地域活性化策を示した

 次に、ワイン産地として知られる山梨を代表して、山梨大学生命環境学部の柳田藤寿教授が、「ワインを究める 食と微生物」と題して講演した。柳田教授は、冒頭、食のブランド化に関する研究が文部科学省の予算に採り上げられたことを報告して、参加者を驚かせた。柳田教授の専門は乳酸菌の研究で、微生物を使った大豆でつくった「飲むヨーグルト」で、北杜市と連携して地域活性化に貢献している。

 また、製造法で異なるワインの分類を説明したあと、その品質を決める要素として、ブドウの「品種」「気候」「土壌」「人間」を挙げた。「日本のワイン消費は、過去最高を更新している。山梨でも、かつては販売で余った甲州ブドウでつくっていたので、外国産に比べるとおいしくなかった。いまは違うが、気温が高く、雨が多くなるなど、国内の生産環境は厳しくなっている」と、国産ワインの生産環境の変化を述べた。

 また、ワインのブドウ分類では、遺伝子分析が進んでいるとしたうえで、「甲州ブドウは、ヨーロッパ系であることがわかった」という。山梨の甲州ブドウは、2010年にOIVという国際団体で国際品種として認められたばかり。県を挙げてヨーロッパに日本ワインを売り込み、評価が高まっているそうだ。柳田教授によれば、現在、国内のワイン消費量は、安価な輸入品やスパークリングワインがけん引して34万kl達し、ブームが訪れているという。

 柳田教授は、こうした実績や研究をもとに、例えば海洋酵母でブドウを発酵することに成功し、「山梨大学ワイン」として製品化に成功するなど、地域活性化に貢献。「地産品を使って、今後も何かを発酵させた商品をつくっていく」と、将来への意欲を語った。

山梨大学の柳田教授

 フォーラムの最後には、テーマの一つである障がい者をもつ家族について、東京・武蔵野市で健常児と自閉症児の共学教育を実践する学校法人武蔵野東学園の清水信一・常務理事が、「障害のある人とその家族のユートピアの実現」と題して講演した。

武蔵野東学園の清水常務理事

 武蔵野東学園は、健常児と自閉症児、健常でも不登校の児童・生徒が二人三脚で学校生活を送っているの混合教育を行っている。清水常務理事は、「昨年度は自閉症児259人が卒業し、企業就労率が53%に達している。ぜひ、本校の卒業生の就労をお願いしたい。当校の強みは、職場定着指導者(教員)の定着率が97%と高く、企業への支援が継続してできることだ」と訴えた。

山梨ICT地産地消フォーラムには約100人が集まった

 山梨県内では、南アルプスチロル学園の跡地を利用し、農業従事研修を行う武蔵野東チロル学園(仮称)を設立する。武蔵野東学園の創立50周年を記念して、ここでつくった作物を使った記念品をつくる計画だ。清水常務理事は「将来は、ここに障害のある人と家族のユートピアをつくりたい」という。(谷畑良胤)