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クローズアップ ASEAN 現地で日本のITが売れる“これだけの理由”

2014/11/13 18:54

週刊BCN 2014年11月10日vol.1554掲載

ASEANのタマゴ、ミャンマーをタイから開拓

 日本からの直行便が少ないミャンマーへの“橋渡し役”を担うのは、タイである。バンコク空港から1日数本、ミャンマー行きの便が出て、およそ1時間で経済都市ヤンゴンに到着する。ビジネスの面でもミャンマー進出がタイ経由で始まることが多い。タイを製造拠点とする日系メーカーは、このところ、人件費が安いなどのミャンマーの利点を認識して、タイの第一工場に加えて、第二工場をミャンマーで建設するなど、少しずつ進出を進めている。タイほどには経済が発展しておらず、電力などインフラ整備も不十分なミャンマーだが、日本企業は、昔、現在のミャンマーと環境が似ていたタイで培った経験をミャンマーでの事業展開に生かすことができそうだ。

 現時点でミャンマーに拠点を構えている日本のITベンダーは、NTT ComのほかにNTTデータなど、大手を中心とする数社程度にとどまっている。ミャンマーは、市場の可能性こそ大きいが、それと同じくらい、事業展開のリスクも高い。最近、建設ラッシュに沸くヤンゴン。外国人向け住宅の家賃は急騰しており、「(ASEANでGDPが最も高い)シンガポールの水準さえも超えている」と、NTT Comの宮崎カントリーマネージャーは驚きを隠さない。さらに、通信料金も大きなコストになる。ITベンダーは、先行投資を惜しまずに事業体制を整え、数年先の回収に向けた覚悟と体力がなければ、ミャンマーでのビジネス展開は難しい。

 ミャンマー事業に関してITベンダーが期待を寄せているのは、日本政府がODA(政府開発援助)のかたちで取り組んでいるインフラ整備のサポートだ。日本政府は、現在、ヤンゴン都市圏に隣接するティラワ経済特別区で、同地区をヤンゴンと結ぶ幹線道路を整備する計画を進めている。日本企業が現地で工場を建設し、事業展開しやすい環境が整いつつある。

 ミャンマーに進出する日本企業が増えれば、ITの支援ニーズも旺盛になる。ITベンダーは、ミャンマーに拠点を置かなくても、タイで商談を詰めて、案件の獲得につなげることができるので、当面の間は、ミャンマーとタイを“セット”で捉えることが有効な事業戦略になりそうだ。(ゼンフ ミシャ)
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