KDDI(田中孝司社長)と東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G、大澤正典社長)は11月21日、都内で製造業向けの中国ビジネス支援セミナーを開催した。「転換期の中国事業をどうマネージメントすべきか」をテーマに、識者や両社の担当者が知見を披露した。

 キーノートスピーチには、経営共創基盤(IGPI)パートナー取締役マネージングディレクターで、益基譜管理諮詢 (上海)有限公司(IGPI上海)の執行董事を務める木村尚敬氏が登壇。「中国事業変革のためのアプローチ 先送りを続けていては失敗する!」と題して、製造業のグローバルビジネスにおいて中国事業のあり方をどう考えていくべきかについて、アプローチ仕方や留意点を説明した。木村氏は、成長著しい中国企業の現状を踏まえ、「日本企業のビジネスは、漫然とした垂直統合では通用しなくなる。自分たちがどこで稼ぐのか明確に定義しないとこれからのビジネスは難しい」と指摘。さらに、「事業開発側と生産改革側の両方に変革の本気度が問われている。事業開発側は、現地で徹底的にガチンコの交渉をしながら戦う覚悟があるのか。ボトムラインの生産改革側では、本気でローカル人材を登用できるかがポイントになる。80年代の米国のように、日本と仲良しの市場ではない。一般的な日本人のルール、法令順守のような価値観とは違う世界がたくさんある。そのなかでこれから先、拠点戦略、事業戦略を考えるのかという大きな問いを突き付けられているのがここ数年の状況」と解説し、中国に進出する日本企業にエールを贈った。
 
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IGPIパートナー取締役マネージングディレクター、IGPI上海執行董事の木村尚敬氏

 続いて、畢恩吉商務信息系統工程(上海)有限公司(B-EN-G上海)の佐々木淳・副総経理が登壇。「日本からは見えにくい中国工場の生産システム事情と最新設備管理による見える化」をテーマに講演した。中国拠点のシステム改革を成功させるためのポイントを解説するとともに、それをサポートするソリューションとして、同社の主力製品である生産管理パッケージ「mcframe」やIoTソリューションを紹介した。佐々木副総経理は、「経済成長により、中国拠点でつくって採算がとれる製品を絞り込む必要が出てきている。ローカル企業も、粗悪なコピー品の製造ではなく、品質が上がってきていて、日系企業は厳しい戦いを強いられているが、中国人の管理者クラスにシステムを紹介すると、IoTを一気に入れたいとのニーズがある。工員が手入力をミスなく頑張るということに彼らはあまり期待しておらず、現場から一気にデジタルで情報を収集したがる」と分析した。また、グローバルなシステム展開を成功させる方法論として、「現地で要件定義を再度することが大事で、本社側が使っているテンプレートなどをそのまま使ってもうまくいかない」と指摘し、mcframeがそうしたニーズを汲んで多様なユーザー向けに進化していることをアピールした。
 
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B-EN-G上海の佐々木淳・副総経理

 上海凱迪迪愛通信技術有限公司(KDDI上海)の守岡純治・Solution企画部部長は、「IoTを活用した中国製造現場の生産性向上からエネルギー消費量のモニタリング」について解説した。自転車シェアリングサービスの「Mobike」などを例に挙げ、「中国ではB2Cの世界でIoTを活用したサービスが急速に浸透している」としたうえで、「B2Bでも業務をIoTで改善したいというニーズが大きくなっており、建設、製造、物流、農業など多くの分野で導入事例が出てきている」と説明した。KDDIはそうしたニーズの高まりを踏まえ、江蘇省で「常熟グリーン智能製造技術イノベーションセンター」を運営する菱創智能科技(常熟)(菱創智能)と協業している。中国政府は、2015年に発表した「中国製造2025(中国製造業10か年計画)」で、製造業イノベーションセンターの建設による工場スマート化を5大プロジェクトの一つに指定しており、常熟グリーン智能製造技術イノベーションセンターはその一環。守岡部長はこうした取り組みとともに、IoTを活用した同社のソリューション提供事例をいくつか紹介。設備のオペレーションミスや製造ロボットの稼働状況、工場のエネルギー消費量、環境規制物質の排出量などを可視化して制御する事例が出てきていることを説明し、IoTソリューションに対するニーズの幅広さをあらためて強調した。
 
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KDDI上海の守岡純治・Solution企画部部長

 セミナーの締めくくりには、北京凱迪迪愛通信技術有限公司(KDDI中国)の武田英也・ビジネス推進本部本部長が、「サイバーセキュリティ法とKDDI中国グループの取り組み」と題して講演した。2017年6月に、中国でサイバーセキュリティ法が施行されたことを受け、「多くのお客様から問い合わせをいただいているが、対応に苦慮されていることがほとんど」(武田本部長)といい、日系企業がサイバーセキュリティ法をどう読み解き、どう対応すればいいのかを解説した。武田本部長は、「(サイバーセキュリティ法は)個人情報や重要データは中国国内で保存しなさい、というのが基本で、一応欧米のルールをよく勉強してつくったという印象で、ある意味であたりまえのことをいっている内容。ただし、どう運用されるかは慎重な見極めが必要で、日系企業は中国事業のガバナンスのあり方を見直すきっかけにしたほうがいい」と、アドバイスした。
 
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KDDI中国の武田英也・ビジネス推進本部本部長