デジタルアニーラの話も人気

――ソフトバンク時代も「IBM Watson」の講演で聴衆者を引きつけていましたので、富士通のZinraiを話すのは、お手の物と思います。Zinraiの次に講演内容として多いのは、どんなことになりますか。

中山 最近は、量子コンピュータと汎用コンピュータの両者のよさを取り入れた富士通の新アーキテクチャコンピュータ「Digital Annealer(デジタルアニーラ)」の話をよくします。正確にいうと、量子コンピュータではありませんが、デジタルのコンピュータと量子コンピュータの違いから説明し、デジタルアニーラに触れています。
 
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想定事例を交え、先端技術を語ることを心掛ける中山五輪男・首席エバンジェリスト

 デジタルのコンピュータは、「0」or「1」の世界です。一方の量子コンピュータは、「0」と「1」を同時にもつ、重ね合わせができる量子ビットの特徴を生かすので、数万倍から数億倍の速さを出せる。講演では、基本的な仕組みから始まり、業種業態でこの仕組みがどう使えるかという「想定事例」を数多く示しています。

 デジタルのコンピュータ上で面倒な処理の一つに、「組み合せ最適化問題」というのが存在しています。富士通のデジタルアニーラは、「組み合せ最適化問題」を解決する専用マシンなんです。例えば、営業担当者が東京から全国の複数か所を巡回する際、ルートを考えると組み合せが多くある。例えば、6都市を巡回する場合は、720通りになる。このなかで最適なルートを迅速に導き出すことができます。

――講演では、「想定事例」を多くだすことを心掛けているそうですが、デジタルアニーラはどんな産業に適していますか。

中山 例えば、輸送・物流ルートの最適化や災害対策に際して、自衛隊員の配置や食料の供給などのルートを探る。あるいは、工場作業員のシフトなどもそうです。工場は、個々人の就業条件が異なっていますが、こうした条件から最適なシフトを一瞬で導き出せます。製薬業では、多くの分子を組み合せて新薬を開発する際は、金融関係でも、みずほ銀行の株が上昇すればトヨタ自動車の株価が下落する、といったように、株価の関連性を知ることができ、最もリスクの少ない購入の仕方を指南できる。

――富士通の中山さんとして、何度か講演を聴講したといいましたが、ソフトバンク時代に比べ、富士通の製品・サービスを語る比率は高まっているように思います。ソフトバンクは流通・卸という立場ですので、さまざまな製品・サービスを中立的に説明できます。一方、富士通はSI会社を標榜していますが、聴衆者の認識はメーカーですので、そのあたりが影響しているのでしょうか。

中山 そんなに富士通色が出ていますかね。でも、ソフトバンク時代から、先端技術をわかりやすく説明するという心掛けは変わっていません。ただ、富士通では、エバンジェリストであるだけでなく、富士通の製品・サービスを売る営業マンでもありますので、多く買ってもらえることを意識しています。しかし、それでもソフトバンク時代とスタンスは変わっていません。

 確かに、ソフトバンクにいながらも、iPhone/iPadのエバンジェリストをしていた時、アップルの社員と間違われるほどでした。IBMの社員かと思われるほどにIBM Watsonを語っていましたしね。そのメーカーの人間になりきってやっていました。それが、富士通の社員になったので、富士通の製品・サービスを中心に語っているだけの違いです。

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