freeeは11月1日、クラウド販売管理サービス「freee販売」の提供を開始した。案件登録、商談内容の管理、見積もり、受発注、請求書の発行・回収などにワンストップで対応し、フロントオフィス業務の効率化に貢献する。クラウド会計サービス「freee会計」との連携によって、仕訳登録や請求・入金状況の把握など経理業務の簡略化も図れる。同社はfreee会計との一体利用によって発揮される価値をアピールして拡販を進める方針だ。新サービスによって従来のバックオフィスからフロント側にもビジネス領域を広げ、「統合型経営プラットフォーム」の実現を目指す。
(藤岡 堯)
freee販売は販売管理サービスとしては後発になるものの、同社の調査によると、小規模事業者のおよそ76%が販売管理業務を紙や「Excel」で手掛けており、市場は大きいとみる。ソフトを使っていても、発注、受注、案件などそれぞれの業務で単体のツールを利用しているケースが多く、情報の分断や作業工数の増加などに悩む顧客は少なくないという。
新サービスにより、ユーザーは入力・転記作業の負荷軽減や、請求・支払い漏れの防止などが期待できる。さらに入力データから損益に関する数字を自動収集し、グラフ化できるため、案件ごとの損益情報を瞬時に把握することも可能となる。同社の調べでは、Excelで書類を作成した場合と比べ、年間で384時間の工数削減が見込めるという。インボイス制度の適格請求書フォーマットにも対応する。
「freee販売」開発責任者の佐藤顕範氏
freee会計と顧客のマスターデータを共有するため、既存のユーザーは取引先データの移行作業などが不要で、導入する際のハードルが下がる。販売側での入力は会計側にも反映され、販売側で案件を登録すると、取引データが会計側につくられ、お金の流れなどもリアルタイムに分かる。freee販売の開発責任者である佐藤顕範氏は「(販売側で)業務を回すだけで、勝手に経理業務も終わる」とアピールする。同社はクラウド会計ソフトと一体的に利用できる販売管理サービスは国内で初だとしている。
販売面ではfreee会計との相乗効果を前面に打ち出し、まずはfreee会計ユーザーを中心に訴求する。会計事務所など既存の販売パートナーだけでなく、販売管理領域に強いパートナーとの協業も検討する。当面はITの受注開発など無形商材のビジネスを展開する小規模事業者を主な想定顧客とし、今後予定する稟議承認や在庫管理などの機能追加に合わせ、より規模の大きい企業や有形商材を扱う事業者も取り込む狙いだ。
同社はfreee会計や「freee人事労務」を主軸に、電子契約、プロジェクトマネジメントなどの周辺領域のサービスも合わせた統合型経営プラットフォームとしてサービスを充実させており、販売管理領域への参入は、フロントオフィス業務支援を本格展開する足掛かりとなる。現時点でSFAやCRMなど、他のフロントオフィス支援ツールとの連携は実装していないものの、佐藤氏は「営業活動を行う中で必要なツールとの連携は検討の対象に入る」と説明。自社でサービスを提供するか、他社のツールを使うかなど、連携の具体的なあり方は未定としながらも「統合型の価値を発揮しやすい部分に関しては自前で提供することになる」との見解を示した。