日立製作所は4月28日、2025年から3カ年の新しい中期経営計画を発表した。近年の事業成長を後押ししているLumada事業に最注力。長期目標として、全社におけるLumada事業の売上比率80%、利益率(調整後EBITA率)20%達成を掲げた。社会インフラ事業などにAIを適用し、デジタルの価値を広げることで高い収益性の確保を目指す。
徳永俊昭 社長
4月に就任した徳永俊昭執行役社長兼CEOは、会見で新中計を「Inspire 2027」と名付けたと説明。「デジタルをコアとして各事業の強みを掛け合わせ、日立ならではの価値を創出し、持続的な成長を目指す」と決意を述べた。
同社が成長のエンジンとするLumada事業は、16年にIoTプラットフォームとして展開を開始した。その後、顧客のバリューチェーン全体を支援するデジタルエンジニアリング事業へと拡大・変化してきた。今回、これらの事業のさらなる進化形を「Lumada 3.0」と位置付け、同社が強みを持つ社会インフラ領域などのドメインナレッジにAIを掛け合わせることでソリューションを強化する。同社ではすでに鉄道インフラの領域でAIによって保守コストの低減などを実現した事例があり、製造業やエネルギー分野でも展開していく。
Lumada事業では、投資強化と業種特化型の大規模言語モデル(LLM)の開発など事業ポートフォリオの改革を実行し、27年までの3年間で売上比率50%、利益率18%という目標を設定。具体的な時期は示さないものの、長期目標としてさらに高いそれぞれ80%、20%を掲げた。徳永社長は、Lumada事業の伸長には、同社のIT事業部門である「デジタルシステム&サービス」セグメントがかぎになるとの認識を示した。グループ内の米GlobalLogic(グローバルロジック)が中核となってグローバルのDX事業を拡大し、全社Lumada事業をけん引しているほか、国内ではミッションクリティカルな大規模SI案件を獲得できており、顧客の評価も高いと説明。「ドメインナレッジとAIで強化したLumadaによって、収集したデータを価値に変換するデジタルサービスをより一層強化する」とした。
(堀 茜)