ラクスは10月14日、業務システムの個別開発をサービスとして提供する「ASURACORE」(アスラコア)を発表した。AIを中心とする開発基盤に、バックオフィス業務SaaSの「楽楽クラウド」で培った業務知識やシステム開発の知見を組み合わせて、要件定義から設計・構築、検証・調整まで一貫して対応し、顧客(ユーザー企業)の固有要件に柔軟に応えられるシステムを短納期、低コストで提供する。SIerをはじめとするパートナー経由での販売を積極的に進めるほか、海外展開も計画する。同社はSI領域への進出によって、既存のSaaSでは対応が難しいニーズを取り込み、成長につなげる。
ラクスはASURACOREを「人間とAIの組み合わせ」による開発サービスと位置付ける。中核を担うのは「ASURACOREディレクター」と呼ぶ専門人材だ。ディレクターは顧客の悩みや要望を聞き取って要件を整理し、AIとの対話を通じてシステムを構築する。完成後は顧客と動作確認を行い、フィードバックを反映する。顧客が自ら要件定義や開発をする必要はない。稼働後に生じた追加の要望にも同じディレクターが対応し、システムを継続的に改善する。
サービス名は、三面六臂で知られる阿修羅(サンスクリット語でアスラ)と、「核」を意味するコアを組み合わせた。阿修羅の多面性になぞらえて世界で戦えるプロダクトに育てるとともに、企業の業務の核となる存在を目指すとの思いを込めたという。
開発に用いるAIには、ラクスが楽楽クラウドなどを通じて得た業務知識、システム開発知識がオントロジー(システムが解釈可能な情報・文脈)として与えられている。画面UIやAI-OCRなどシステムを構成する要素を「コンポーネント」として用意。AIはオントロジーを参照しながらコンポーネントを使って構築するため、最短で1カ月という短期間で、品質が担保されたシステムがつくれるとする。コンポーネントは継続的に追加・拡張する予定だ。構築したシステムには、楽楽クラウドと同じ水準のセキュリティーと運用が適用される。人間向けのUIを持たないヘッドレスモードでの構築も可能で、MCPを通じて生成AIからシステムを動かせるという。
ASURACOREのサービス概要
料金形態は、プロフェッショナルサービスとして提供されるシステム構築の費用と、保守・運用やサポートを含む月額利用料の二本立てとし、構築費用は60万円から、月額利用料は5万円からを想定している。価格体系の詳細は煮詰めている段階で、月額利用料に関してはユーザー数を軸に、コンポーネント単位の課金や、データベースの数に応じた加算などを検討している。
サービス提供にあたり連携するパートナーに関して、取締役の本松慎一郎CAIOは「国内のIT業界で業務要件を落とし込める人材を最も多く抱えているのはSIerだ」と述べ、大手、中小を問わず、ASURACOREディレクターの役割を担えるパートナーと幅広く協業する姿勢を強調した。中村崇則社長は「SIerとは共存共栄していく」とした上で「ディレクターはわれわれで抱えなくてもいいと思っているほどであり、(ASURACOREを通じて)システムを構築できる人材を増やせる企業と組みたい」と呼び掛けた。
新サービスをアピールする中村崇則社長(右)と本松慎一郎CAIO
本松CAIOはパートナー側のメリットとして、従来型のSIと比べて大幅に開発工数を抑えつつ、これまでと同等の価値を提供できるため、少ない稼働でしっかりと収益化できる商材になると強調。プロフェッショナルサービスの価格は、パートナーが裁量を持って設定でき、パートナーが持つラクス以外のソリューションとASURACOREを組み合わせたシステムの提供など、付加価値に応じた価格のあり方が可能になるとした。また、楽楽クラウドにおいてマス広告でサービスの認知を高めてきた実績を踏まえ、将来的にはASURACOREでも同様な広告戦略で、パートナーの案件獲得に貢献できるとの見方を示した。
ASURACOREは2027年1月に顧客への提案を始め、一部顧客の先行利用を経て、同年4月に正式販売とパートナー展開を開始する。27年度中にはインドネシアでの展開を予定し、その後はベトナムなどASEAN諸国へ広げていく。事業目標として29年3月期にARR10億円を掲げており、中期的にはこの事業で売上高1000億円の実現を目指す。
当面は中小企業をターゲットとし、既存のSaaSに対して「自社の業務フローや業務課題に合っていない」「自社に不要な機能が多い」といった悩みを感じている企業のニーズに応える。ただ、システム自体には楽楽クラウドのノウハウが盛り込まれていることから、大規模での利用にも耐えられる設計が可能であり、段階的に中堅企業やエンタープライズへと広げていきたいとする。
中村社長は「1社1社の話を聞き、それぞれに合った業務システムをつくれるプラットフォームをパートナーと一緒に提供したい。国内を超えた拡販という部分にASURACOREでチャレンジしていく」と意欲を見せた。(藤岡 堯)