視点

個人資産としての健康

2002/05/20 16:41

週刊BCN 2002年05月20日vol.941掲載

 国の医療政策が方向転換を始めた。丸抱えの包括的な医療から目的を明示した個別対応型の医療へ、現場請求に基づく実績認知型から計画とチェックが可能な治療政策へ、医療情報の積極的な公開へ向けての布石などである。これらの一連の政策は、医療費の削減を第一の目的として議論され、実行されようとしているものではあるが、われわれにとっては、医療と健康のあるべき姿について考える良い機会でもある。医療は基本的に病症罹患時の対応機能であり、予防医療は病気にならないため、または早期発見・治療を目的とした医療分野ということになる。

 医療分野というのは、広義には健康管理分野の一機能、つまり健康を維持できない状態が生じたときに健康状態に戻すための処置・指導を行うものである。われわれは生まれてから死ぬまで、自分自身の健康を管理することで多くの利益を得ることができる。従来は健康管理があたかも医療分野の仕事のように定義され、個人の健康情報が、医師によって、あるいは企業(建保組合)によって管理されているかのような誤解が生じていた。健康でありたいと願うなら、まず自身の体の状態をいつも正確に知っていることが基本となる。自分が感じる身体の調子と検査データとの相関を知って、自分なりのチェックポイントをつくり、生活習慣の工夫をする。おかしいと感じたら、これらのデータをもとに医療やそのほかの専門家と適宜話し合うことで健康状態からの逸脱を最小限に留めるようにする。

 もちろん、治療時に行われた判断や対処の内容も、次に役立てるために自身の健康データの一部として管理しておく。健康は人生にとって最も重要な資産である。お金の運用と同様に健康も資産として運用することができるような仕組みが求められている。今後、個人の健康に関するあらゆる情報を確かなセキュリティのもとで一元的に預かり、これを専門的・継続的に分析し、ライフサイクルに応じた最適な資産運用を支援するような健康資産管理サービスが生まれてくるだろう。個人資産として健康を再定義することで、検診や医療サービスの変化だけでなく、現在は漠としたヘルスケア分野のビジネスモデルにも共通の核を作ることができる。
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