視点

著作権と対をなす「公正な利用」

2006/03/06 16:41

週刊BCN 2006年03月06日vol.1128掲載

 「IT企業、インターネットのベンチャーといっても、ライブドアに独創的な技術はない。他の日本の会社もしかり。アイデアと技術で新しい領域を開く、グーグルに代表されるアメリカのそれとは、中身が違う」。ライブドアへの強制捜査開始以来、こうしたコメントを何度か耳にした。否定はしない。ただ問題は「なぜそうなったのか」という点だ。

 アメリカの著作権制度が何を目指すかは、憲法に明示されている。連邦議会の権限を定めた一節に、「著作者および発明者に、一定期間それぞれの著作および発明に対し独占的権利を保障することによって、学術および技芸の進歩を促進すること」とある。これを達成するために、アメリカの著作権法は、権利の保護と並ぶもう一方の柱として、フェアユース(公正利用)と名付けた、著作権の侵害にあたらない利用領域があることを明示している。

 ロボット型の検索エンジンは、ウェブに散在するデータを収集し、格付けしてインデックス化し、利用者の検索要求にそった答えを返す。そもそもの出発点であるデータ収集も、リストアップしたサイトの中身を示す、最終段階での掲載内容の「引用」も、個々の著作権者の許諾なしに行われている。もしも日本で、こうした技術の発想が生まれても、「フェアユースは許される」という社会的な合意と法的な裏付けがない以上、先頭を切って開発し、運用することには大きなリスクが伴う。国立国会図書館は、アメリカの民間組織、インターネット・アーカイブが行っているのと同様の、ウェブページの網羅的な収集を検討したが、官庁や国立大学、電子雑誌など、限られた領域を、事前に著作権者の了解を得て、カバーするにとどめざるを得なかった。

 図書館が所蔵する書籍を網羅的に電子化して、語句による検索を可能にするグーグル・ブックサーチ計画は、アメリカでも著作権侵害の訴訟にさらされてはいるが、フェアユース規定のないところでは、こうした試みは検討の俎上にも上がり得なかっただろう。

 フェアユースは、情報産業の新分野を切り開く挑戦の母胎となっている。われわれはなぜ、著作権制度をもつのか。そこから問題を立て直し、権利の保護に加えて、公正な利用を強く促す性格を著作権制度の仕組みに持たせ得なければ、新世代情報産業におけるアメリカの独走は、この先も長く続く。
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