日本IBMがIBM製品を使ったソリューション販売で功績を上げたITベンダーを表彰する「IBM エクセレント・パートナー・アワードJapan2010」では、IBMのクラウド・コンピューティング技術を活用した貢献例が多くあった。キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)が昨年、グループのSaaS基盤として「ITサービス共通基盤」を構築した例は、最も先進的で大規模な展開であった。
巨大なSaaS基盤にIBMソフト群を利用
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| 和田昌佳 取締役執行役員 |
キヤノンITSの親会社、キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は、「中期計画」でITソリューション事業を重点戦略として推進することを決めた。この一環として、グループ全体のSaaS基盤となる「ITサービス共通基盤」を、昨年度(2010年12月期)中の9か月間をかけて構築している。
同基盤は、キヤノンITSが中心となって構築したが、このなかでPaaSの重要な基幹モジュールとしてIBMのソフトウェアが使われた。同社の和田昌佳・取締役執行役員クラウドビジネスセンター長は、「認証や課金、アクセス制御、ユーザーID管理などの部分で、TivoliやWebSphereの両製品を活用した。オープンでスタンダードな規格に対応し、パブリッククラウドなど外部接続性にも優れていたことで選んだ」と語り、グループ全体で使うSaaS基盤構想に最も適したソフトだったと評価している。
活用したIBM製品は、「Tivoli Access Manager」や「Tivoli Provisioning Manager」「WebSphere Enterprise Service Bus」などで、PaaS基盤のSOA(サービス指向アーキテクチャ)環境を構築した。
同社の佐々木勝吉・クラウドビジネスセンターテクニカルサポート部長は、「当社の幅広いサービスと顧客のクラウドや既存システム環境と幅広く連携する仕組みをつくりたかった。IBM製品は、それに応えられる仕組みをもっていた」という。そして、現在進行形で、パブリッククラウドサービスなどとの連携を行う開発をしていることを明かす。
SaaS基盤の構築では、IBMソフトウェアのグローバル支援部隊が、開発に膝詰めで対応。「当社のSaaS基盤のように、これだけ大規模な開発例は日本国内にはなく、IBM社の支援は助かった」(和田取締役)と感謝している。強力な支援体制が整っていたので、短期間で基盤構築ができたと評価したうえで、「IBMの将来的なクラウドのロードマップが知りたい」(同)と、すでに米国で使われている次世代技術を念頭に次の展開を練っている。(谷畑良胤)