視点

夏の電力不足への対応──労務管理の新時代へ

2011/06/09 16:41

週刊BCN 2011年06月06日vol.1385掲載

 この原稿を書く直前に、九州へ出張した。びっくりしたのは、夜のネオンの明るさだった。節電モードの東京との違いに、愕然としたものである。この夏の電力供給不足を受けて、とくに東北・関東や中部の企業は節電が求められる環境になった。そこで、節電時代における労務管理の視点を整理してみた。

(1)サマータイム導入について

 サマータイム制度は、欧米を中心に世界の70か国以上で導入されている。日本でも温暖化対策の一環として、早期実施が検討されている。サマータイムを導入する場合、人事・労務的には、始業時刻と終業時刻の変更が必要になる。ただ、全国展開の会社だと、日の出の時刻も1時間以上違うので、各地で始業時刻を揃えるのか、異なる始業時刻を設けるのかの問題がある。サマータイム導入の最大の注意点は、残業が多くなるという問題である。サービス残業が多い日本では、始業時刻を繰り上げても実質的な終業時刻は変わらず、労働時間が長くなってしまいがちである。結果として労働時間が長くなれば、節電のためのサマータイム導入も意味がなくなる。

(2)クールビズ

 定着したクールビスだが、今年は、よりいっそうのクールビズが求められる。人事・労務的には、服務規律の分野に当たる。接客をしない社員には、もっとカジュアルな(ポロシャツのような)私服の検討をしている企業もある。どこまでが許されるのかの基準を明確にしないと、トラブルの元となる。

(3)在宅勤務

 計画停電の問題もあり、在宅勤務の導入も多くの企業で検討されている。在宅勤務に関しては、さまざまな問題がある。在宅勤務であっても、労働関係法令は適用される。労働時間の管理も当然必要となり、健康管理なども出勤と同様に扱う必要がある。在宅勤務では、通信費などの費用負担のルールを取り決める必要がある。また、情報の管理が最重要の問題となる。情報漏えいの対策をしっかりと講じる必要がある。

 節電時代における社内ルールの変更は、労働条件の変更となる。労働条件の変更は、原則、社員の合意が必要となり、多くの場合、就業規則の変更と周知義務が伴うこととなる。こういった手続きを踏まなければ、思わぬ労務トラブルに発展する恐れがあることも考慮しておかなければならない。
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