視点

通信キャリアがクラウドのチャネルに浮上

2012/04/05 16:41

週刊BCN 2012年04月02日vol.1426掲載

 光回線(FTTH)やスマートフォン端末の販売、インターネットサービスなどを手がける全国の通信キャリアが、法人向けのクラウドコンピューティング事業を積極化している。光回線が行き渡り、これまで主な収益源としてきた家庭や企業のユーザー向けの光通信接続の需要が減って価格競争に突入。一方で次の市場として法人向けの“土管(通信回線)”に乗せるクラウド・サービスに本腰を入れている。SaaS/クラウド市場で収益を上げにくいと悩むシステムインテグレータ(SIer)は、低価格で簡単に導入できるクラウド・サービスの新たな商流となりそうな、通信キャリアの動向に注目したい。

 本紙は、昨年8月、KDDIとクラウド型のSFA(営業支援)/CRM(顧客情報管理)を提供するブランドダイアログ(BD)との資本提携を特報した。KDDIは、BDのクラウドサービス「KDDI Knowledge Suite」を同社の直販網を生かしてAndroid端末と通信回線を一緒に販売し始めた。NTTドコモもNTTデータイントラマートのクラウド型グループウェアサービスを昨年4月から法人向けに販売している。ソフトバンクグループは、両社よりも早くiPhone/iPad関連で法人向けクラウドサービスや関連商品の販売を開始。新たな流通商材として、大きな収益源になっている。

 注目したいのは、こうした動きはここに挙げた大手3社にとどまらないことだ。BD関連では、KDDIの系列会社である中部テレコミュニケーションがBDと資本提携し、KDDIと同じように「Knowledge Suite」を自社の法人向け販売網で営業活動を開始した。これ以外にも、全国の電力系である北海道電力グループの北海道総合通信網(Hotnet)が1年前に、中国電力グループのエネルギア・コミュニケーションズが昨年12月にそれぞれクラウドサービスを開始。各社ともデータセンターを保有する。

 従来、電力系通信キャリアは場所貸し(IaaSなど)をメインにクラウド事業を展開して法人向け事業を拡大してきた。だが、企業に対しては、これ以外の商品・サービスが手薄な状態で、これを補うクラウドサービスの拡充を急いでいる。通信キャリアはシステム開発・販売(SI)を得意とする会社ではないので、その点に一抹の不安があるものの、販売人員と顧客アカウントの多さは魅力的だ。ソフトウェアベンダーや自社ソフトをもつSIerにとっては、通信キャリアは新たなチャネルとして重要になると確信している。
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