視点

新ビジネスモデルのヒントは身の回りにある

2012/07/19 16:41

週刊BCN 2012年07月16日vol.1440掲載

 米国の国立標準技術研究所(NIST)などが開催した自動翻訳のアルゴリズムを競うコンテストが、「ビッグデータ」の本質を世に問うたといわれている。みずほ情報総研が発刊する情報誌「NAVIS」7月号に、「ビッグデータ」が注目されるに至った経緯が書かれていた。このコンテストは、英文を別の言語に自動翻訳し、最後にもう一度英語に翻訳して、最初と比較しての精度を測る競争だ。そこにGoogleが参加して情勢が一変したという。Googleは、高度な自然言語処理技術を使わず、ウェブ上にあるデータから言葉と言葉の関連性の距離を計算して翻訳を導き出し、「膨大なデータがあれば分析精度が跳ね上がる」ことを実証した。つまり、アイデア次第で「ビッグデータ」を操ることができるという衝撃の事実をもたらしたのだ。

 この記事を読んで、「アイデアさえ確かならば、世にある素材を使って、新しいビジネスモデルをつくれるはず」という思いを強くした。手軽に導入できるクラウドコンピューティングが整備されている状況にあって、データを閲覧するデバイスも安価で利便性が高く、一からつくり込まなくても顧客に満足度を与えるITシステム・サービスを構築することができるのではないか、ということだ。

 日本IBMが6月に広島市で開いた「ソリューション協業会議 2012 Spring」。同社に関係するビジネス・パートナー同士が、自社の新しいビジネスを発表し、技術・販売の両面で協業を呼びかけた。

 例えば、神戸に本拠を置くコベルコシステムは、「SmartCrewクラウドサービス」という名称で、中堅・中小企業向けサービスを展開している。すぐれた実績をもつアプリケーションを厳選し、クラウドサービスとして提供する。地場に根づく同社のシステム提案を応用すれば、信頼のある身近なITベンダーから安価なサービスが買えるわけだ。かつての計算センターで岡山情報処理センターの関連会社であるアイアットOECは、地震が少なく地価が安い岡山の堅牢なデータセンターを使って、企業のBCP(事業継続計画)に応えるサービスをシステムインテグレータ(SIer)などと展開中だ。

 いずれも、今ある“素材”とちょっとしたアイデアで生み出したもので、ヒットサービスになり得る。自社の事業を改めて整理・分析してみれば、強みを生かした新モデルを創造することも夢ではない。
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