視点

日本のITマーケットを2倍に

2013/01/10 16:41

週刊BCN 2013年01月07日vol.1463掲載

 国内のIT産業は、成長が止まったといわれて久しい。2008年の「リーマン・ショック」の後あたりからそう語られるようになったと記憶している。日本のITベンダーは、突然の事態にうろたえ、今もその状況から抜け出すことができていない。

 日本のIT産業は、1980年代からリーマン・ショック直前まで、道は平坦ではなかったとしても右肩上がりで成長してきた。コンピュータやインターネットは、法人のビジネス拡大を支援し、人々の生活を豊かにした。ITという革命的な経営支援ツールに、企業はわれ先に投資した。ITベンダーにとっては、誤解を恐れずにいえば、何もしなくても事業が伸びる状況だった。製造業や流通業、金融業などの伝統的な産業に比べれば、若く、甘やかされた産業だったのかもしれない。

 停滞を感じたITベンダーは、共通して今後は海外進出だという。しかし、本当に国内のITマーケットはもうダメなのか。総務省の情報通信国際経済局が発表した「平成23年度 ICT経済分析に関する調査」レポートに、見過ごしにできないデータがあった。2010年度、日本の民間企業が行う設備投資額に占める情報(IT)化投資比率は23.0%。過去30年の歴史をみると、毎年ほぼ前年のポイントを上回っており、一見すると、IT化が着実に広がっているように思える。

 しかし、世界最大の経済大国である米国の数値と比べてみて愕然とした。米国のそれは、40.5%。日本の約2倍。実は、1995年時点ではこのIT化投資比率は、日本と米国は同じ水準だった。それが、この15年で2倍も格差が生じてしまったのだ。

 日本の多くのITベンダーは、ここ数年、海外市場に熱い視線を向けてきたが、この数値だけをみても、国内のITマーケットは、まだまだ広がる可能性があるとみて間違いない。ITの導入率が低い業種や中小・零細企業、そして、地方……。開拓の余地は大きい。国内最大手のコンピュータ・ITサービスベンダーである富士通の山本正已社長は、力強くこう語っている。「例えば、農業。日本にはまだIT化がされていない業種や領域がたくさんある。ITが必要な分野はまだまだ多い」。

 1980年代に勃興したIT産業が、停滞感に襲われている。今まさに日本のIT産業の正念場であり、力の見せどころだ。国内のITマーケットを現状の2倍にする。少々気負いすぎかもしれないが、『週刊BCN』は、その実現を情報の提供で支援したい。IT産業が伸びるために不可欠な情報を集めて伝えていく所存だ。
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