中小企業のIT化をサポートするITコーディネータ(ITC)の活用を推進することを目指して、ITコーディネータ協会(播磨崇会長)が、ユニークな取り組みに乗り出した。9月10日に、信用金庫の中央金融機関である信金中央金庫と連携し、ITCを信用金庫に紹介する取り組みを開始したのだ。
預金を受け入れ、事業資金を貸し出すことによって企業経営を支援する信用金庫は、中小企業と緊密な関係を築いている。ITC協会は今回の提携によって、各地の信用金庫にITCを紹介し、信用金庫は取引先である中小企業の経営を支援するためにITCを活用する。ITCによる支援によって、中小企業の事業を活性化することを狙いとしている。
ITC協会と信金中央金庫は、(1)ITCの仕事の確保(2)中小企業のIT化の促進(3)IT化による中小企業の活性化を図り、信用金庫にとって融資した資金を返済してもらいやすい環境を整えるという三点を目指している。
制度の展開にあたって問われるのは、生産管理や営業力強化など、フロントでのIT活用をいかに実現するかだ。従来通り、財務会計や人事給与管理といった後方業務でITを活用するだけでは、ビジネスの活性化につながらないからだ。
中小企業は生産性や競争力を高めることを急務としていて、とくにフロントでのIT活用に対するニーズが高まってきている。そんな状況のなかで、ITCの役割も大きく変わってきた。多くのITCは、これまで主にバックエンドのシステム構築を支援してきたこともあって、「クラウド」や「モバイル」「ソーシャル」を取り入れたフロントでの支援についてはスキルが不十分だといわざるを得ない。だからこそ、ITC協会と全国のITCたちが密に連携を取って、新しい技術のスキルを取得するための活動が求められる。
今号をもって終了するこのシリーズでは、ITCがフロントでのIT活用をサポートする事例を数多く紹介してきた。例えば、福井県小浜市に本社を置き、木製の食品包装化粧樽の製造・卸販売を手がける吉田桶樽商店。ITCの先織久恒氏とともにホームページを立ち上げ、全国での顧客開拓を進めている事例だ。
ホームページの立ち上げやFacebookやTwitterでの情報発信──。クラウド/モバイル時代に適した新しいITC像が求められている。(ゼンフ ミシャ)

ホームページを活用して、木桶・木樽の美しさをアピールする吉田桶樽商店。福井県小浜市をベースとして、全国規模で顧客の獲得に取り組んでいる