IT販社の大塚商会に、「若い社員の誰もが目指している」という憧れの営業リーダーがいる。2003年に同社に入社して以来、9年連続で社長賞を受賞しているトップセールスの中島一護さんだ。今は営業の第一線で活躍しながら、自分の経験やノウハウを周囲に伝えてチームを動かすリーダーの活動に力を注いでいる。売り上げのノルマが大きくなり、新しい案件やパートナーの獲得が急務になっているなかにあって、中島さんは自分のコミュニケーション力を磨き、会社が彼に期待しているマネジメントの腕を見せようとしている。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/大星直輝)
[語る人]
大塚商会 中島一護さん
●profile..........中島 一護(なかじま かずもり)
岡山県出身。34歳。大学卒業後、パッケージ製造会社を経て、2003年12月に大塚商会に入社。ビジネスパートナー事業部に配属。ITディストリビュータとして「お客様目線」を第一に考え、サーバー・PC・CADなどの提案・販売を担当。13年10月、課長代理に昇格。
●所属..........ビジネスパートナー事業部
MA・CAD営業部 CAD 1課
課長代理
●担当する商材.......... CAD(コンピュータ支援設計)ツール
●訪問するお客様.......... 既存販社を中心とする販売パートナー
●掲げるミッション.......... 新しい案件やパートナーの獲得
●やり甲斐.......... お客様に喜んでもらうこと
●部下を率いるコツ.......... 自分を手本にして輝く営業を見せる
●リードする部下.......... 3人
トップセールスを“卒業”して営業リーダーとして奮闘
社長賞を9回受賞して、そのうちの2回は「最優秀賞」を手にするというトップセールスの道を歩んできた。地道な営業活動によって、当社の販売パートナーと信頼関係を築き、継続的な売上拡大につなげている。
モットーは「先月と同じ仕事をしない」。常に新しい提案をしてみて、仕事のこなし方を進化させることを心がけている。
先日、大阪のお客様が東京に出張してこられ、わざわざ当社に来社して、私にお土産を手渡してくださった。こんなふうに、お客様とまるで家族のような関係を築くことができていることがとてもうれしい。私は、これまでの実績を生かして、現在は営業リーダーの活動に力を注ぎ、部下たちも私のような動きをする体制をつくりたいと考えている。
毎朝9時に出社し、およそ30分をかけて念入りにメールをチェックする。販売パートナーやユーザー企業から夜中にメールが届いて急な対応が必要になるというようなケースが少ないので、朝のメールチェックを踏まえて、その日の大枠のスケジュールを組み立てる。営業の第一線で駆け回っていた頃は、「自分の数字を追いかけすぎて、メーカーや社内に迷惑をかけている」といわれるほど、個人プレーが多かった。そのことを反省して、課長代理に昇格した今は、仕事をチームのメンバーに振って、バックで支援するようにしている。週に2日は、自分が営業現場に出て、案件を受注することによって、メンバーに提案活動の手本を見せる。そして、それ以外の時間は社内で作業をして、お客様からの問い合わせに応えたりしながら、チームの動きを管理している。
チームは、私の上司と私以外に、3人の営業担当と3人のアシスタントで構成されている。私の部下の3人の営業担当者は、年齢の幅が広く、お兄さんのような50代のメンバーもいる。だから、リーダーとしての経験はまだ浅く、人見知りのところもある私が強いリーダーとして振る舞うのは、かなり勇気がいる。リーダー力を高めるために、最近はよくメンバーたちとランチを共にし、彼らの話に耳を傾けて、自分の対話スキルを磨いている。
自分の将来をイメージしてみれば、トップ営業からリーダーになって、3年後は正式に「マネージャー」になりたいと考えている。会社からも、そのように期待されていることをひしひしと感じている。
ノルマのプレッシャーに、周囲からの期待感。日頃のストレスを解消するために、土日はアイスホッケーに没頭し、からだを動かして、仕事のことを忘れるようにしている。
[紙面のつづき]社外の成功事例を採り入れて新鮮な発想で取り組む
販売パートナーやお客様は、ITディストリビュータとして高い知名度をもつ大塚商会に、「顔の見える営業」を求めている。私はこれまでCAD製品のセールスとしてこの声に応え、頻繁にお客様の下に足を運び、太いパイプを築いてきた。営業マネージャーを目指しているいま、その関係を生かして、お客様からアドバイスをいただくかたちで、自分の指導力を高めようとしている。
先日、お客様の会社で数十人の部下を率いる部長さんに、営業マネージャーに求められる動きについて聞いた。その方が実践し、成果に結びつけていたのは、自分のお客様がどのような営業スタイルで、どのような成功事例を生んでいるかをヒアリングして、それらを自分の会社で応用するという方法だった。部長さんいわく、「社内ばかりみていると、新鮮な発想が湧いてこない」。その話を聞いて「なるほど」と思い、さっそくトライした。
しかし、ちょうどその頃は多くのお客様が半期決算を迎え、問い合わせが殺到していた時期。営業スタッフたちは対応に追われていた。新しいことを始めようと思っても、なかなか着手できない。そこで私が考えたのは、地味なことではあるが、いくら忙しくても、自分で必ず1日10分ほどの時間を見つけて、社外の成功事例を参考にしながら新しい提案に挑むということ。例えば、販売パートナーにメーカーのキャンペーンを案内したり、チラシを作成して製品の特徴をアピールしたり――。意識して時間を割けば、こうした新しいことができるのだ。
部下たちにも、このように少しずつ新しい仕事に取り組むように伝えている。忙しいときにも、新鮮な発想でチームを動かしていきたい。

柔らかい革が気に入って、奮発して購入したイタリア高級ブランド「Daniel&Bob」のビジネスバッグ。「高かったけれども、軽くて持ちやすいので、買ってよかったと思う」とご満悦だ。