ハードメーカーの動きが激しい。PCメーカーのレノボは、IBMからx86サーバー事業を買収し、グーグルからは同社傘下のモトローラ・モビリティを買って、自社に取り込んだ。マイクロソフトは、密かにx86サーバーを自社開発していることを明らかにしている。一方で、ソニーはパソコン事業をファンド会社に譲渡することを決断した。サーバーと端末市場で今、参入と撤退がいくつも同時に起きているのだ。

　とくに、レノボには勢いがある。レノボの今年度（2014年3月期）第3四半期の決算資料をみると、全売上高のうちPC事業が79.1％を占めており、PCがレノボを依然支えていることは間違いない。それが今、「PCプラス」という戦略のもと、総合ハードメーカーに変貌を遂げようと、一気に動き始めたのだ。今回の買収はその一環だ。

　レノボが2月中旬に公表した第3四半期の決算資料から、今回新たに記入された、見逃せないポイントを見つけた。それは新組織である。レノボは2013年度第4四半期に、プロダクトの種類によって4区分した新体制を敷いている。その4区分とは、「PC」「モバイル」「エンタープライズ」そして「エコシステム＆クラウド」だ。世界のPC市場で、ヒューレット・パッカード（HP）からNo.1を奪ったレノボが、今度はモバイルとエンタープライズ、そしてクラウドに照準を合わせて、PCと同様に世界シェアNo.1を本気で奪いにいくという覚悟の現れだろう。

　IBMのx86サーバー事業とモトローラ・モビリティの買収は序章に過ぎない。レノボは今後、法人向けIT製品とクラウドで、有力なITベンダーや事業部門を傘下に収めるだろう。そして、エコシステムという言葉を盛り込んでいる点を考えると、今以上にチャネルビジネスに力を入れてくるはずだ。

　世界で人口が最も多い中国は、レノボにとってホームグラウンド。発展を遂げる中国で、今後は国内メーカーというアドバンテージを有効に使い、PCだけでなく中国でさまざまなハードを売りに走るだろう。中国でシェアを取れば、世界シェアは自ずと上がり、そのマーケットシェアを武器に部品調達力が増す。そうなれば、他社が追随できない価格競争力を手に入れることになり、アウェイの米国や欧州についても市場を牛耳ることができる。中国最大手のITベンダーが、いよいよ世界のハード市場攻略に牙を剥き始めたのだ。