霞が関のリーダーに核心をただす!

<霞が関のリーダーに核心をただす! IT政策をどう進めるかネックは何か>経済産業省 情報処理振興課長 江口純一 氏 ――ITベンダーへの期待と要請

2014/04/24 16:04

週刊BCN 2014年04月21日vol.1527掲載

語る人
江口純一 氏
経済産業省 情報処理振興課長

プロフィール 1964年8月生まれ。1990年、早稲田大学大学院修了(理工学研究科電気工学専攻)。同年、通商産業省に入省。技術振興室統括班長、内閣府政策統括官、JETROロンドンセンター次長、経済産業省情報セキュリティ政策室長などを歴任。2012年4月、現職について現在に至る。

提案型のビジネスが求められる

 企業内のITシステムは、スクラッチ開発からパッケージソフトに主流が移り、カスタマイズもGUIベースでできるようになるなど、ITベンダーの仕事の内容はずいぶんとかたちが変わってきたと感じる。

 しかし、いまだに受託開発型の事業を主流にしているSIerが多い。それ自体は必ずしも悪いことではないが、今はユーザーや元請けベンダーにいわれたことだけをやるのではなく、世の中のニーズに応えるソリューションを開発したり、発掘したりなどして、提案型のビジネスに対応する力をつけなければ生き残ることができない時代だ。

 日米を比較すると、米国ではIT技術者がユーザー企業側に多数所属しているが、日本の場合はほとんどがITベンダー側にいる。米国では、業務の本質を理解している自社スタッフがシステム開発やIT導入を主導し、攻めの経営に役立てようとしている。これに対して、わが国の場合は、「攻めのIT投資」をどう確立するかが課題になっている。

 いずれにしても日本のITベンダーには、ユーザーの業務をよく理解したうえで、最新のITで何ができるのかを提示していく役割が課せられている。

ユーザーとの連携で新たな商機も

 ITを提案するうえで忘れてならないことは、ユーザーのカスタマイズの要求にすべて応えるようなやり方が、必ずしもユーザーのためになるわけではないということだ。単体のアプリケーションにしろ、ソリューションにしろ、技術的にはカスタマイズは可能だろう。しかし、際限なくそれを重ねていくと、システムがどんどん複雑化して運用しにくくなるし、リプレースしようにも従来のシステムにロックインされて、オープンな検討ができなくなる可能性もある。

 ユーザーの業務をITソリューションに合わせて変えたほうが、ビジネス自体がうまくいくケースもあるはず。ユーザー側の意識を改革しなければならないという難しさは当然ある。しかし、ユーザーと密に連携し、将来の事業を一緒に考えながら最適なITシステム導入の提案ができるベンダーが求められている。

 ITベンダーが、ユーザーとともに業種特化型のソリューションを開発し、それを同業の企業に水平展開する事例も出てきている。ユーザーとの強いつながりは、ITベンダーにとって新たなビジネスチャンスにもなるはずだ。(談)(本多和幸)
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