霞が関のリーダーに核心をただす!

<霞が関のリーダーに核心をただす! IT政策をどう進めるかネックは何か>経済産業省 情報処理振興課長 江口純一 氏 ――現在進行中の注力事業の中身

2014/04/10 16:04

週刊BCN 2014年04月07日vol.1525掲載

語る人
江口純一 氏
経済産業省 情報処理振興課長

プロフィール 1964年8月生まれ。1990年、早稲田大学大学院修了(理工学研究科電気工学専攻)。同年、通商産業省に入省。技術振興室統括班長、内閣府政策統括官、JETROロンドンセンター次長、経済産業省情報セキュリティ政策室長などを歴任。2012年4月、現職について現在に至る。

新事業に35億円の予算確保

 企業のIT投資額はどんどん増えていくのが望ましいが、仮にそれほど変動しないにしても、投資の質の改善を促す必要がある。単純なコスト削減などではなく、売上増や新たな付加価値の提供を目指す「攻めのIT投資」の割合を増やしていかなければならない。

 そうした観点で、今年度、新たに35億円の予算を確保して始めたのが、「中小企業等のクラウド利用による革新的省エネ化実証支援事業」だ。

 また、社会保障・税番号制度を導入する行政分野について、個人番号の利用の仕方や情報システムへの影響などを整理し、2014年度の早い時期に、システム改修の投資計画や、行政サービス・業務改革の具体的な計画を策定する。

中小企業のクラウド移行を補助

 基本的には、文字通り中小企業を中心にクラウドの利用を促進し、生産性を向上させることをコンセプトに掲げている。具体的には三つの事業で構成する。まず、中小企業が、オンプレミスやデータセンター(DC)のハウジングで使っている情報システムを、省エネルギー型のクラウド対応DCに移行する際の費用を補助する。

 中小のDCでも仮想化が進み、コンピューティングリソースを有効に活用してもらえるようにするためのクラウド基盤ソフトウェアの開発にも取り組む。まずは経産省が既存のクラウド基盤ソフトの課題を抽出し、それを解決するための実証を行ってくれる事業者を公募する予定。コストの2分の1を補助金で賄うスキームだ。

 三つめの事業としては、DCの省エネに関する指標づくりを進める。現状使われている「PUE」はファシリティの指標で、IT機器の性能や利用効率が考慮されていない。現在、日本発のDC専用の省エネ指標「DPPE」を提唱し、ISOで標準化作業も進めている。これを普及させるための実証も重要施策に位置づけている。

IT投資で減税措置も

 税制優遇措置でも、2003年のIT投資促進税制以来、久々に広くIT投資に使える制度として「生産性向上設備投資促進税制」を創設した。これまで、この種の減税措置はハードへの投資が主な対象だったが、ソフトも対象になった。このように、企業のIT投資を促す仕組みは、これだけで十分とはいえないが、ラインアップが揃ってきている。(談)(本多和幸)


組織の概要

 ITの普及や技術開発の促進に関する施策を担当。ベンダー、ユーザー、双方に向けた施策を展開する。情報処理技術者試験の経産省窓口でもある。
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