視点
本の「販売データ」で得たものと失ったもの
2014/04/24 16:41
週刊BCN 2014年04月21日vol.1527掲載
書店の「販売データ」が、出版社や本を卸す取次会社と共有されるようになった今、書店店頭の品揃えや仕入担当者の意識は大きく変わってきている。
書店の仕入担当者は、本に対する自身の思い入れや売れ行き、出版社の情報を頼りに、新刊・既刊書を問わず本を選び、長い期間陳列してきたが、販売データが即時に入手できるようになった2000年頃からは、ランキング志向がより強くなってきた。担当者による「勘や経験」によって本を仕入れている書店は今も少なからずあるが、返品率が40%時代となり、流通コストが増加し続けているなかで効率性が求められるようになったのだ。返品率は機会損失をかんがみて、書籍で30%、雑誌で25%が適正であるといわれていたので、40%は異常事態。1冊の販売収益は、流通コストに吸収されてしまう水準で、出版ビジネスモデルそのものが問われる状態にあるといえる。その結果、「売れにくい本」は排除される傾向が強まってしまった。店に個性がなくなったというのは、こうした理由からである。
新刊書籍の数は年間約7万8000点。1日200点以上もの新商品が出るなかにあって、初速のいい本はひと握りに過ぎない。だから、出版社の編集者もどんな本が売れているのかを掴んで、次の企画を考えるようになった。いつ、どこの店舗で、何が、どんな読者層に購入されているかがわかる書店の販売データは、出版業界に計画性・効率性をもたらした。だが、その一方で、クリエイティブな企画力をも失わせつつあると感じる。
とはいうものの、この連鎖は返品率が高まった出版業界の都合だけによるものとは言い切れない。ランキング志向はまさに読者のニーズそのものだったからだ。テレビドラマ化や映画化などのメディアミックスやクチコミによってヒット作が生まれてきた。それが書店の経営を支えてもきた。
本の寿命が短命化し、動きにくい商品群が店頭でロングセラーになりにくくなり、いわゆるロングテールと呼ばれる本の販売は、ヒット作も含めて、アマゾンなどネット書店が担う格好になってしまった。
競争原理の三原則といわれるのは、「価格」「品質」「サービス」だ。データを生かした「コンテンツの企画力と品揃え」のサービスが高まることを期待したい。
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