「オープンイノベーション」推進の担い手は、ベンチャー企業だけではない。国は、既存の中小企業も含めて、ITを活用した競争力の強化を支援する考えだ。そのための施策は、経済産業省の外局である中小企業庁が主導している。
中小企業支援ポータルサイトの運用を開始
中小企業庁は、2013年7月末から、中小企業の支援ポータルサイト「ミラサポ」を「お試し版」として開設・運用してきた。基本的なコンセプトは、補助金事業など、国や公的機関の支援施策の情報をわかりやすく網羅的に提供することと、経営者が専門家に経営に関する悩みを相談したり、経営者同士が情報交換するコミュニティ機能を提供すること。分野ごとの専門家のデータベースも整備し、ユーザーが自分たちの課題に応じた専門家を選んで相談するとともに、派遣を依頼できる場を提供しようというものだ。
10月には、「お試し版」に寄せられたユーザーの要望・意見を踏まえて、「本格版」の運用を開始した。向こう3年以内に、企業100万社と専門家1万人の参加を目指しているが、開設から約2か月半の時点で、アクセス数約20万件、ユーザー登録数は約1万6000件という状況だった。
「本格版」ではUIを改良し、補助金の申請などのエントリーも受け付けるようにした。さらに、コミュニティ機能の活用促進策として、サイト上で「グッド・ビジネス・アワード」というビジネスアイデアのコンテストを展開している。事務局による一次選考を通過した応募者は、サイト内にコミュニティを開設し、オンラインセッションで専門家などからアドバイスを受け、アイデアのブラッシュアップを図ることができる。最終的にアワードを受賞したアイデアに対しては、「ミラサポ」事務局が事業化を支援。パートナー開拓や資金調達、広報活動などを総合的にサポートする。
「ミラサポ」の構築・運用は、電通を幹事会社とするコンソーシアムが受託し、セールスフォース・ドットコムのクラウドサービスを導入している。ただし、サイトの構成やコンセプトについては、目標を達成したとはいいがたいJ-SaaS(経産省の中小企業向けSaaS活用基盤整備プロジェクト)の二の舞になるのではないかと懸念する声もある。「お試し版」の開設時には、Twitterでサイボウズの青野慶久社長がこれを批判し、セールスフォース・ドットコムの宇陀栄次社長が応酬したことで、話題になった。(本多和幸)

本格版の運用を始めた「ミラサポ」