経済産業省商務情報政策局
(左上から)情報政策課長 間宮淑夫 氏、情報処理振興課長 江口純一 氏、情報経済課長 佐脇紀代志 氏、情報通信機器課長 荒井勝喜 氏 データ流通の規制緩和で新産業を創出
経済産業省のIT施策に関する課題として複数の課長から挙げられたのが、「データ流通における規制緩和」だ。ビッグデータ、オープンデータの利活用は、昨年政府が発表した「世界最先端IT国家創造宣言」により“国是” となったわけだが、「新しい産業の創造・育成を促すには、もっとデータ流通の自由度を高めていく必要がある」(間宮淑夫・情報政策課長)というわけだ。間宮課長は、「少なくとも次の通常国会では個人情報保護法の改正案が出て、本人の同意なしに個人データを第三者に提供する『オプトアウト』が認められるケースが拡大する。課題解決の方向性が定まるはず」と、展望を話す。
一方、佐脇紀代志・情報経済課長は、さらに一歩踏み込んで、「データを活用した新産業創出のためには、民間企業などがもっているデータ同士をつなぐ、新しいデータ利活用のための基盤と、プラットフォーム事業者の塊をつくらなければならない」という課題意識をもっている。企業がオープンにしていない情報も、対価をとって流通させ、データを融通しあう仕組みを構築したいという。これにより、「さまざまなところで埋もれているデータに新たな付加価値が生まれ、その流通ビジネスが国際的に大きな市場へと化ける可能性もある」(佐脇課長)と期待を込める。ただし、情報を提供する企業側のモチベーションを喚起するための施策はまだ具体化されておらず、早期の対応が求められる。
ITベンチャーに流れる 資金と人材を増やす
日本のIT産業育成の観点からは、ベンチャー支援のさらなる充実も重要課題だ。荒井勝喜・情報通信機器課長は、「大企業では、時代の変化についていけなくなってきている。ただし、ベンチャーに流れる資金と人材が、日本ではまだまだ少ない」と指摘する。江口純一・情報処理振興課長も、「経産省は、ITベンチャー企業のイノベーションや資金調達の支援、さらには突出した能力をもつITクリエーター個人の発掘・育成などを進めてきたが、ベンチャー側からすると、まだまだかゆいところに手が届くものにはなっていなかった」と、反省の弁を口にする。産業競争力強化法にもとづいて設立された官民出資の投資ファンドである産業革新機構の機能を拡充したり、「エンジェル投資家」とマッチングしたりするなど、これまでの取り組みよりも間口を広げたベンチャー支援施策を模索する考えだ。(本多和幸)