アップデートされた「世界最先端IT国家創造宣言」
安倍政権の肝煎りで、成長戦略を構成する重要な要素として昨年6月に閣議決定された政府のIT戦略「世界最先端IT国家創造宣言」。当初から、定期的にレビューを行って内容をアップデートしていく方針は明らかにされていたが、今年6月には、この1年間で顕在化してきた課題を盛り込んで早くも最初の改定を行い、その内容を閣議決定した。
改定内容の中心となるのは、「IT利活用推進のための3+1戦略」と呼ばれる施策だ。「オープンデータやパーソナルデータの利活用推進」「マイナンバー制度の積極的活用」「規制制度改革の推進」という3施策と連携して、政府自身の情報システム改革を組み合わせてよりシームレスな情報流通の仕組みをつくり上げることで、IT利活用のすそ野をさらに拡大しようという考え方だ。
また、農業ITをいっそう推進して日本の農業を強くしていくために、データ流通のための標準化などを進めたり、東京五輪を引き金にして、ITを利活用した「おもてなし」を世界に発信していくことなども改定のポイントとして掲げている。ちなみにこの「おもてなし」の具体的な内容は、セキュリティを確保したうえで世界最先端のITS(高度道路交通システム)による交通サービスや、快適に利用できる通信ネットワークインフラを提供することなどだ。
IT国家創造宣言との違いは? 情報サービス産業への影響は?
しかし、こうした説明だけで、情報サービス産業がどう変わっていくのか、ひいては国民生活がITの恩恵を受けてどのように便利になっていくのかをイメージできるだろうか。もともとの世界最先端IT国家創造宣言にも似たようなコンセプトがあったのではないかと既視感を覚える人も多いだろう。実際に今回の改定で、何が改められたのか、もしくはどんな要素が付け加えられたのか、ぴんとこないというのが多くの人の偽らざる感想ではないか。
この連載では、世界最先端IT国家創造宣言の改定ポイントを、「お役所言葉」から普通の日本語に翻訳し、この改定が、情報サービス産業の市場にどのような影響を与えるのかをわかりやすく解説していく。(本多和幸)