東京に本社を置くソフトウェア開発のシステムエグゼは、日本での医療や保険のシステム開発をベトナムの子会社システムエグゼベトナムで行ってきた。佐藤勝康社長は、数年前から、年10%を超える賃金上昇率ではオフショア開発の経営が難しくなるとみて、現地で日系企業が運営する中堅・中小工場の生産管理の支援業務を開始した。名づけて「EXEX(エグゼクス)生産管理システム」である。
この生産管理システムの支援業務は、(1)受注管理・出荷、(2)生産計画、(3)MRPログ照会(余剰在庫、在庫不足、生産の前倒し、先送り、キャンセルなどの対応)、(4)工程管理、(5)外注管理、(6)購買管理、(7)原価管理に分けられる。
同社が支援する工場の規模は、中堅・中小クラス。工場の生産管理システムや在庫・工程管理システムは、ある程度のところまではExcelでできるが、規模が大きくなり、スピードが求められるようになると、どうしても対応が難しくなる。それに現地の中小企業は、Excelの操作・運用に苦しんでいた。同社もこうした相談を多数受けていたことが、このビジネスを始めたきっかけでもある。
ところで、このシステムをオンプレミスで行うかクラウドの活用なのかという選択肢については、意外なことにクラウドの評判が悪く、オンプレミスが圧倒的に多い。大きな理由の第一はコストだ。内容にもよるが、クラウドは月に支払う経費が10万円くらいはかかる。オンプレミスだと500万円程度の初期費用はかかるけれども、後はエグゼクス生産管理システムを導入しておけば費用をあまりかけず運用することができる。第二は、クラウドの見える化である。日本の本社にすればクラウドのほうが都合がいいが、みられる側の工場では日本人社員は1人か2人でいつもバタバタしているのに、日本のオフィスから四六時中管理されるのはかなわない。かくして、クラウドは敬遠される。
システムエグゼベトナムの上地正繁マネジャーは、「現地の中堅・中小企業はどこもぎりぎりの状況で経営しています。きれいごとではうまくいかないのです。エグゼクス生産管理システムも一律ではなく、ユーザーのニーズに応じて、Lite版からデラックス版まで細かくサービス内容とコストを分けてサービスさせていただいています」と、日本企業の事情を語っている。
アジアビジネス探索者 増田辰弘
略歴
増田 辰弘(ますだ たつひろ)

1947年9月生まれ。島根県出身。72年、法政大学法学部卒業。73年、神奈川県入庁、産業政策課、工業貿易課主幹など産業振興用務を行う。01年より産能大学経営学部教授、05年、法政大学大学院客員教授を経て、現在、法政大学経営革新フォーラム事務局長、15年NPO法人アジア起業家村推進機構アジア経営戦略研究所長。「日本人にマネできないアジア企業の成功モデル」(日刊工業新聞社)など多数の著書がある。