名古屋市でシステムの受託開発を行うデジタルミックスが業績を伸ばしている。自動車を中心とした製造業が基幹産業の愛知県では、DX推進のためIT投資が加速していることが背景にある。冨板恒匡・代表取締役は、自社にしかない強みを確認しつつ、新規事業開拓に注力。さらなる成長を見据えている。
(取材・文/堀 茜)
──どのようなビジネスを展開しているか。
幅広いシステム開発を手掛けている。自動車保険や、車やその部品の物流システム、小売りの販売管理など。例えば西濃運輸の物流システムの開発・維持・保守なども行っており、ほとんど地元東海エリアの企業が顧客になっている。
──愛知県内のITビジネスの特徴は。
愛知県の産業は、トヨタ自動車が中心。県内でITビジネスをやっている企業は、どこも多かれ少なかれトヨタ関連の仕事をしていると思う。当社は、商社系の顧客が中心なのが特徴で、豊田通商の関連企業の受託開発が多い。
生産性向上のためにDXを推進する流れもあり、県内はバブルのような感じでIT投資が爆発的に伸びている。当社もありがたいことに増収増益が続き、3年連続で社員に特別ボーナスを出せる状況になっている。
一貫対応で顧客からの信頼獲得
──事業はどのように成長してきたのか。
一つ仕事をいただくと、そこから信頼を得て広がっていくというケースが多い。豊田自動織機の仕事で、最初は倉庫管理システム関係をやっていたが、実績が出てくると次はフォークリフト関係、さらにカーエアコン用のコンプレッサーの部品管理といった感じで、どんどんと追加で依頼してただき業績が伸びてきた。
──強みはどんな点か。
当社が得意としているのは、システム構想から導入まですべて対応できる点だ。社員は、システム全体のコンサルティングができる人材から、導入・維持まで一貫して担当できる者も在籍しており、幅広いレンジの工程で対応できる。そういった点を評価していただき、一度受注すると、同じ企業の別の部署で新たなシステム開発を依頼してもらうかたちでリピートオーダーにつながっている。トヨタ系は企業規模が大きいので、一つの部署が会社1社ほどの規模感になっている。
社員の意識改革に注力
──ビジネスが順調な状況は、この先も続く見通しか。
あと数年は同じような状況が続くと思うが、その先は分からない。大手企業を中心に、システム開発を内製化する動きが強まっているからだ。ローコード開発でできることは自分たちでという流れができている。当社のようなSIerには、より高い専門性が求められ、明確な目的が無ければ仕事は減っていくという危機感がある。
冨板恒匡 代表取締役
受託開発は、こういったシステムがほしいと依頼され求められるものを作るのが仕事だが、これからはお客さんが、これがほしいだろうから作るという、需要の先読みが求められる。受け身ではなく、企画提案していけるように脳を切り替えないといけない。そのため、当社は中部経済連合会と名古屋市が設立した「ナゴヤイノベーターズガレージ」に参加している。新規事業創出を目的としていろいろな交流会やセミナーを開催しているので、そこに中核社員を参加させ、新規事業を模索している。
──具体的にはどのような事業を考えているのか。
次世代のブロックチェーンの研究開発をやっている。ブロックチェーンをインフラとし、今の製造業の物流システムなどに使われているEDI(電子データ交換)の代わりになるような仕組みを想定している。グローバルサプライチェーンで必須のものになっていくと思うので、1年前から準備している。今は、その先にどんなサービスが載せられるかを考えて汗をかいている。
新規事業創出には、社員の意識改革が重要になる。新しいことをやろうとセミナーへの参加を促した時、当初は社内からかなり反発があった。仕事は切れ間なくあるので、会社も社員たちも、そこに満足している部分があった。でもそれではだめだと口を酸っぱくして言っている。社員には、目の前の仕事に満足せず新しいことに挑戦してもらいたい。セミナー参加などで外部の人との関わることで刺激を受け、徐々に意識は変わってきている。
──危機感の背景には何があるのか。
生成AIが登場したことで、IT環境の変化の速さについていくのが大変だと感じている。今の子どもたちはICT機器を当たり前に使う環境にいて、そういうデジタル人材が社会人になっていくと、今以上にシステム開発を自社でというかたちになるだろう。ローコードツールですら、すでに使われなくなっているものが多くなっており、SIerの仕事が淘汰される時代がやってくるとみている。だから、自社にしかない強みは何があるのか、今から考えやっていかないと間に合わない。
地元に貢献し続けたい
──今後の展望は。
愛知県の車産業を中心とした製造業は、国内でナンバーワンだと思っているし、地元企業のシステムを開発してきて培ったノウハウで貢献し続けたい。東海エリアは、新規事業創出の支援が手厚くあるなど、環境面でも恵まれている。IT業界のいいところ、面白さは、自由な発想でサービスをつくることができる点だ。地元企業の成長に貢献できるようなソリューションを生み出していきたい。
Company Information
1994年創業。システムの受託開発をメインとする独立系SIer。顧客は愛知県を中心とした東海エリアの企業。名古屋市の本社に加え、同県一宮市と岐阜県大垣市にも拠点を持つ。2022年度の売上高は8億3600万円。従業員数は71人(23年7月現在)。